ウォーレン・バフェットの「上からの階級闘争」勝利発言はなぜ生まれたか エリートが操り、不平等を拡大させる「100年前に生まれた緊縮財政」の構造

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ウォーレン・バフェット
世界的な投資家であるウォーレン・バフェット、「上からの階級闘争」勝利発言にある真意とは(写真:AP/アフロ)
緊縮財政は「健全な経済運営」の代名詞のように語られるが、本当にそうだろうか。なぜ、緊縮策が導入されるたびに、労働者の賃金は低迷し、不平等は拡大するのか。クララ・E・マッテイ著『緊縮資本主義:経済学者はいかにして緊縮財政を発明し、ファシズムへの道を開いたのか』は、緊縮政策を正当化するために用いられた「純粋経済学」の実相を分析。100年前、イタリアとイギリスで生まれたこの理論が、いかにして民主主義を骨抜きにし、私たちの社会を階級格差の固定化へと導いたのか、その核心に迫る。同書「はじめに」からの抜粋第3回(第1回はこちら、第2回はこちら

テクノクラシーと「脱政治」理論

緊縮策が上首尾に進むのは、政策に情報を与え、正当化する一連の経済理論が存在しているためである。

『緊縮資本主義: 経済学者はいかにして緊縮財政を発明し、ファシズムへの道を開いたのか』
『緊縮資本主義: 経済学者はいかにして緊縮財政を発明し、ファシズムへの道を開いたのか』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

本書は、政策決定においてある種の知的体系が一貫して働きかける事実を検証し、その結果生じるテクノクラシー、すなわち専門家による政府が、現代資本主義を脅威から守る上でいかに中心的な役割を担っているかを明らかにする。

テクノクラシーは、いくつかの観点から政策決定を支配している。

一つは、経済学者が権力者に助言する歴史的な慣習である。

もう一つは、認識論に関するもので、経済学者が自ら提起した論拠も含め形成した経済学の形にある。

これらの理論は、階級利益や党派を超えた立場からのものと見なされている。彼らは、経済学を資本主義における価値中立的な真理と主張し、この世のあるがままの真実であり、政治による手は介在しないと考えている。

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