アメリカの農業は「米中貿易戦争」に耐えられるか。大豆の最大輸出先=中国向けがゼロに

アメリカのイリノイ州シカゴを出て、ひたすら西に走る。州境を越えてアイオワ州に入っても、レンタカーから見える風景はほとんど変わらない。収穫期を迎えて茶色くなったトウモロコシと大豆の畑が延々と続く。大型の収穫機がうなりを上げてトウモロコシを刈り取る姿が見えた。これから大豆の収穫が本格化する。
9月下旬、全米最大の大豆とトウモロコシの生産を誇る両州を訪ねた。一帯はコーンベルトと呼ばれる中西部の穀倉地帯のど真ん中。豊かな黒土と平坦な土地は農業強国アメリカの屋台骨だ。
道路沿いに立つ穀物貯蔵庫(カントリーエレベーター)では、収容しきれない穀類を保管する、臨時の巨大プラスチックバッグが空き地に設置され始めていた。天候に恵まれ、今年は「モンスタークロップ」と呼ばれるほどの大豊作が確実視されていた。
「1エーカー(約0.4ヘクタール)当たり大豆が80ブッシェル、トウモロコシは250ブッシェルくらいになりそうだ。とても順調だよ」
アイオワ州中部のグランディー郡の家族農家、ブライアン・フェルドパウシュさん(52)は、高機能種子や硫黄などの微量要素を利用、畑の中に排水パイプを通すなどの工夫を凝らし、全米平均を上回る高収量を見込んでいた。
単位を換算すると、1ヘクタール当たり大豆が5.4トン、トウモロコシが15.6トンになる。日本の大豆の単位面積当たり収量が同1.6トンほどだから、同じ面積から3倍以上もの豆を収穫している計算だ。畑面積は同郡で平均的な1200エーカーで、大豆とトウモロコシが半々。1家族で大豆を1300トンほど生産していることになる。
対中国貿易戦争で価格下落
ところが、豊作であるにもかかわらずフェルドパウシュさんの表情は冴えない。大豆相場が低迷しているからだ。
近所のカントリーエレベーターが提示する大豆の現物価格は、9月下旬で1ブッシェル当たり9ドル70セント。全米で最も生産性が高く競争力があるとされるアイオワ州でも「10ドルを割ると農家は赤字になる」とフェルドパウシュさん。現在のシカゴ先物相場(11月限)水準は、過去5年間の平均を2割近く下回ったままだ。生産量が大きければ大きいほど赤字は膨らむ。
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