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需給悪化織り込みではない長期金利2%の理由。国債増発が直接の要因ではない。フィリップス曲線が変化し、インフレ率上昇の危険性高まる。

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今年度の補正予算案で国債の増発総額は市中発行6.9兆円など計12.7兆円となった (写真:PIXTA)

今年度の補正予算案は、最終的に一般会計歳出が18兆円を超え、石破茂政権下での昨年度補正の約14兆円を上回った。その金額が編成過程で膨らんでいく中、最も大きく反応したのはJGB(日本国債)の超長期債市場で、30年物金利は11月上旬の3.0%台から12月初めには一時3.45%まで上昇した。10年物金利は当初そこまで上昇していなかったが、12月に入り上昇が加速し、直近で1.95%まで上がっている。

ただし、この11月からの長期金利上昇が高市早苗政権の「積極財政」による国債需給の悪化を織り込んだものかというと、単純にそうともいえない。というのも、最も金利上昇が進んだ超長期債は今回の補正予算では増発されておらず、市中での増発額は6.9兆円で、このうち短期国債が6.3兆円、残り6000億円も2年債と5年債で充当された。そもそも増発総額は12.7兆円で、来年度借換債の前倒し発行を圧縮して、市中増発額を6.9兆円に抑えている。

巨額の前倒借換債発行

この「前倒借換債」は、発行が確定している借換債のうち、前年度に発行状況に余裕がある場合、前もって一定額を発行しておける制度だ。今年度は、補正予算編成前の時点で、当初予算の新規国債発行額に匹敵する約30兆円の前倒借換債の発行が見込まれていた。これがバッファーとなり、補正予算規模に対して実質的な市場インパクト(入札による国債の市中増発額)を約半分に抑制できた。

では、なぜこれほどの規模の前倒借換債発行が見込まれていたかというと、2020〜24年度の5年累計で約52兆円もの赤字国債の発行を取りやめたことが大きい。計画していた国債発行をやめると、同じペースでの市場入札を実施すれば過剰調達となる。そのため前倒しで翌年度分の借換債を発行することになるのだ。

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