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前年上回る積極財政に警鐘を鳴らす金融市場。補正予算案での歳出総額18兆円は石破政権時代から急増。金融市場から財政リスクの危機感強まる。

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補正予算案が実質審議入りした12月9日の衆議院予算委員会での高市早苗首相(右)と片山さつき財務相(左) (写真:Getty Images/Bloomberg)

「責任ある積極財政」を掲げる高市早苗政権は、その政策姿勢を体現する大規模な経済対策を打ち出した。補正予算案では、一般会計の歳出総額は18.3兆円に達している。昨年、石破茂政権下で策定された経済対策の規模は、補正予算編成による一般会計の歳出増加分のいわゆる「真水」で13.9兆円だった。今回はその3割増しで、さらに経済対策に含まれたガソリン暫定税率廃止などの減税分2.7兆円を加えれば、5割増しの規模となる。

2025年度の税収見通しは80.7兆円となり、史上最高額を更新する見込みだ。税収の上振れ分は、こうした経済対策などを通じて積極的に国民に還元すべき、との意見も聞かれる。しかし、今回の補正予算の財源に充てられた税収の上振れは、物価高の影響などにより当初の見積もりを上回った税収で、それは財政に余裕が生じたことを意味するものではない。依然として歳入額は歳出額を大きく下回り、政府のお金が足りていない状況は変わらない。そうした中で巨額の補正予算を編成すれば、日本の厳しい財政環境は一段と悪化することになる。

補正予算は本予算の一部?

日本では、秋に補正予算編成を伴う経済対策の実施が毎年繰り返されており、すでに補正予算は本予算の一部になっているかの印象さえある。時の政権は、政策の特色を出しにくい本予算よりも、補正予算でその政策を国民にアピールしようとする傾向が強い。他方、補正予算は本予算よりも審議にかける時間が短く、国会、国民の監視が及びにくい。そのため、無駄な支出が行われるリスクが高まる。補正予算は本来、当初予算編成時には想定されていなかった不測の事態に対応する措置であることを改めて思い返す必要がある。

「責任ある積極財政」を掲げる高市政権の発足以降、金融市場では円安と債券安(利回りの上昇)がほぼ一貫して進んでいる。積極財政政策による国債需給の悪化懸念と財政への信頼低下は、長期国債の利回りを上昇させる。その傾向は、政府の経済対策と補正予算案の発表を受け、一段と強まった。また、積極財政は財政の信頼とともに通貨の信頼も損ねる面があり、その結果、円安傾向が進んでいる。円安は輸入物価を押し上げ、国内物価の上昇圧力を高める。今回の経済対策の最大の柱は物価高対策であり、そこに最も多くの予算が充てられている。

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