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「責任ある積極財政」を掲げる高市政権は「補正予算」が財務省にも政治にも都合のいい現状を破れるか?トランプ氏に確約した防衛費増はどう賄う?

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訪日したトランプ大統領に防衛費増を確約した高市早苗首相(写真:Bloomberg)

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高市政権が発足した。経済政策において、まず注目されるのは、「責任ある積極財政」と銘打った財政政策がどのような形で具体化されるのかである。今後の注目点を3つに整理した。

  1. プライマリーバランス黒字化目標を廃止するか
  2. 補正予算で経済対策、規模と「財源」は
  3. 財政目標「純債務残高GDP比」はアリかナシか

まず注目されるのが、政府の財政目標である「プライマリーバランス(PB、基礎的財政収支)黒字化目標」の行方だ。2000年代の小泉政権期から掲げられてきたが、高市氏は以前より財政政策の機動性を削ぐ、といった観点で否定的な立場を取ってきた。

筆者は、PB目標そのものというよりは、それを前提とした実際の財政運営に課題があると考えている。

「厳格な当初予算」と「緩和的な補正予算」のいびつさ

政府はPB目標の下で当初予算の財政収支を重視し、歳出の伸びを高齢化の範囲に抑える「シーリング」(歳出目安)を設けてきた。しかしこれは物価上昇を十分に考慮しておらず、インフレ下では過度な歳出抑制となる。その結果、予算が補正予算に流れ、「厳格な当初予算」と「緩和的な補正予算」といういびつな構造を生み出してきた。

こうした構造のもと、各省庁は新規施策を補正予算に盛り込む傾向が強まり、財政当局も「今年限り」の補正には比較的寛容である。補正予算が恒常化し、政治的には「毎年経済対策を打ち出せる」という利点が生まれている。

結果として、「当初予算を増やしたくない財務省」と「経済対策をアピールしたい政治」の奇妙な均衡が形成されてきた。

この体制では、本来増やすべき歳出項目が増やせず、「年収の壁」問題や診療・介護報酬の引き上げ議論の遅れといった歪みを生む。インフレ下では歳出調整が必要だが、当初予算の極端な財政規律がそれを妨げている。

その結果、ブラケット・クリープ(所得税の税率階層区分により、賃上げ率以上に税負担率があがる現象)による実質増税や、公的セクターの実質賃金下押しが生じる一方で、補正予算では優先度の低い施策にも資金が回りやすい。

PB目標の廃止、または重要度の低下がもたらす最も大きな効果は、このいびつな財政運営の是正だろう。

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