冤罪被害を訴える98歳の高齢女性。「大崎事件」第5次再審請求の行方/日弁連の旗振り役・鴨志田弁護士が語る、再審制度改正の必要性
再審とは、無実の人が誤って有罪判決を受けた場合に、すでに確定した裁判をもう一度やり直すための法的手続きだ。再審の手続きは刑事訴訟法で規定されている。しかし、再審のハードルは高く、無罪を勝ち取ることは容易ではない。この2年間でも、元プロボクサーで死刑囚となった袴田巌さんや、福井女子中学生殺害事件で懲役7年の判決を受けた前川彰司さんが相次いで再審公判で無罪となったものの、最初の再審請求から再審公判で無罪が確定するまでにそれぞれ43年、21年の歳月を要している。
そうした中、冤罪被害からの迅速な救済を図るべく、再審制度見直しのための刑事訴訟法改正法案が超党派の議員によって国会に提出されている。他方、法務省も法制審議会で2025年4月から刑事訴訟法改正に向けた審議を開始し、議員立法に先回りして法改正を主導しようとしている。
日本弁護士連合会で再審法改正推進室長の任にあり、自らも大崎事件という再審事件の弁護団共同代表を務める鴨志田祐美弁護士に、大崎事件の再審請求の行方および再審制度の問題点や改正をめぐる争点についてインタビューした。
大崎事件は第5次再審請求へ
──鴨志田さんは大崎事件の弁護団共同代表を務めています。冤罪を訴える原口アヤ子さんは近く、5回目の再審請求をするそうですね。
2026年1月に第5次の再審請求を鹿児島地方裁判所に申し立てる予定です。これまで3度の再審開始決定がありながら、いずれも上級審で取り消されるという理不尽な目に遭ってきました。アヤ子さんは98歳の高齢で、現在、介護施設で生活しています。脳梗塞の後遺症があり、発話もできない状態です。それでも無実を認めてもらいたいという気持ちは強く、私が再審請求の話をすると、明らかに顔付きが変わります。アヤ子さんが存命のうちに、何とかして冤罪を晴らしてあげたい。
──大崎事件の経緯について教えてください。
事件は、鹿児島県の大隅半島にある大崎町という小さな農村で1979年10月15日に発生しました。現在、無実を訴えている原口アヤ子さんの夫の末の弟に当たる、四郎さん(仮名)という人物が、自宅横の牛小屋の堆肥の中に死体となって埋められた状態で発見されたのです。「誰かが死体を埋めた」という死体遺棄事件が存在したことは争いようのないことです。しかし逆に言うと、死体が見つかった段階で分かったのはそこまででした。警察は死体が見つかった段階から、殺人事件という鑑識札を立て、殺人事件として捜査を開始しましたが、そこに冤罪事件につながる無理がありました。




















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