ウォーレン・バフェットの「上からの階級闘争」勝利発言はなぜ生まれたか エリートが操り、不平等を拡大させる「100年前に生まれた緊縮財政」の構造

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経済学者のランス・テイラーとエズレム・エマーは、2020年のアメリカ経済のマクロ分析において、過去40年間、国内生産に占める利潤率が大幅に上昇し、同生産に占める労働率が代わりに低下した事実を示している。

資本家の利潤と労働者の損失の関係は対称であり、一方が他方から収奪する構図が見て取れる。実質賃金は労働生産性に比べて著しい遅れを示しており、搾取の増大も明らかだ。

1920年代と同様、今日もなお緊縮策のもとで勝ち組になるのは富裕なる一握りである。人口の上位1%の富裕層は、既存の富(配当、利子など)のもたらす利潤関連収入でおおむね生計を立てている。残る層として、労働収入もしくは薄給と社会給付にもたれかからざるをえない下位60%は敗北している。

2019年のアメリカ中間層の男性労働者の実質所得は、1973年のそれを下回っている。この年以来、構造的格差はアメリカの労働者から毎年2兆5000億ドルを奪い、それらは一握りの手にそのまま流れ込んでいる。

バフェットの「階級闘争」勝利宣言

世界的な投資家であるウォーレン・バフェットは、2006年にこう述べている。

「階級間闘争が存在している。それは事実だ。だが戦争を仕掛けているのは私の属する階級、すなわち富裕層であり、われわれは今のところそれに勝利している」。

本書は、その勝利がいかに圧倒的であったか、そしてそれが100年前にも繰り返され、いかにして後の常勝への道を開いたものであったかを示していく。

クララ・E・マッテイ タルサ大学経済学部教授、同大学異端派経済学研究センター長

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Clara E. Mattei

ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチ経済学部准教授を経て2025年2月から現職。経済思想と技術主義的な政策決定との決定的な関係や、資本主義の歴史を研究している。初の著書である本書の原著『The Capital Order:How Economists Invented Austerity and Paved the Way to Fascism』(2022年)は、『フィナンシャル・タイムズ』紙で2022年の経済書ベスト10に選ばれ、10カ国語以上で翻訳され、アメリカ歴史学会のハーバート・アダムス・バクスター賞(2023年)を受賞した。緊縮資本主義のレンズを通して、資本主義の黄金時代(1945~1975年)とそのケインズ主義を批判的に再評価するプロジェクトを執筆中。『ガーディアン』『ジャコバン』『ネーション』、イタリアの全国紙『イル・ファット・クオティディアーノ』などに寄稿多数。

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