ウォーレン・バフェットの「上からの階級闘争」勝利発言はなぜ生まれたか エリートが操り、不平等を拡大させる「100年前に生まれた緊縮財政」の構造

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政治経済学では、資本家による搾取概念は、働き手が賃金を上回る労働力を提供する働きを指す。言い換えれば、資本家階級は、利潤として剰余価値を充当するのだ。搾取率は、国民所得のうち利潤となる部分(利潤分配率)と賃金となる部分(賃金分配率)の比較によって測定できる。

また、労働生産性を実際に支払われた賃金と比較する方法もある。いずれの指標で見ても、イタリアとイギリスでは1920年代を通じて搾取率が高くなっている。

この傾向は、当時の政治事象と照らし合わせると、緊縮策が労働者に及ぼすインパクトの帰結がはっきりと浮かび上がってくる。1919〜20年の「赤の時代」には搾取は激減し、名目日当は戦前に比べ、イギリスで4倍、イタリアで5倍となっている。

しかし、緊縮策導入を見るや、この傾向は一変した。

世界に広がる不平等と緊縮の遺産

100年後、賃金低迷による搾取、すなわち緊縮策が残した最悪の遺産は、世界的な不平等への圧力として作用し続けている。

アメリカよりはるかに不平等の度合いの少ないイタリアのような国でも、この10年間で最富裕層600万人の富が72%も増加している一方、最貧困層600万人の富は、同期間に63%も目減りしている。

公式統計によれば、2018年にはイタリア人口の8.3%に相当する500万人が絶対貧困に陥っており、2020年にはこの数字は560万人(人口の9.4%)に増加した。

イギリスも芳しい状況ではない。2017〜18年には、子どもの30%(410万人)が相対貧困にあり、そのうち70%が共働き家庭だった。2020年現在、貧困層の子どもの数は430万人に増加している。

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