有料会員限定

〈同意なき買収に成功〉ヤゲオ会長「芝浦電子の技術と工場に投資する」「リストラはない」…次の買収やミネベアミツミ会長へのメッセージまで激白

✎ 1〜 ✎ 8 ✎ 9 ✎ 10 ✎ 11
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小
Pierre Chen/1956年生まれ。国立成功大学を卒業(工学専攻)。1985年に創業した企業を、実兄が先に立ち上げたヤゲオ(国巨)と合併。チェン氏はヤゲオ株の6.98%を保有、個人資産総額は57億ドルで世界600位(フォーブス調べ)。ワインや芸術品のコレクターとしても有名(撮影:穐吉洋子)

特集「ミネベアミツミvs.ヤゲオ 芝浦電子TOBの攻防」の他の記事を読む

芝浦電子をめぐるTOB(株式公開買い付け)は、ホワイトナイトを退けて合意なき買収者の台湾ヤゲオが制するという異例の結果を迎えた。また政府・経済産業省による外為法に基づく審査(クリアランス)のプロセスが長期化したことも注目を集めた。2024年末の買収提案から約10カ月を要した芝浦電子の買収について、ヤゲオの陳泰銘(ピエール・チェン)会長が台北でつぶさに語った。

――買収当事者から見た今回のTOBは、どのようなものでしたか。

今回の経験を通じて痛感したのは、日本の資本市場は米国型のそれと大きく異なるということです。ヤゲオはこれまでに欧米で大型の企業買収を手がけてきました。

特にアメリカでは、電子部品の老舗ケメットを買収(2020年、買収額約16億ドル)し、CFIUS(対米外国投資委員会)の審査もクリアしています。アメリカの資本市場では株主利益が徹底して追求され、台湾企業の買収でもこの姿勢は変わりません。

これに対して日本の企業買収で求められたのは、株主の利益「だけ」ではありませんでした。

日本政府の懸念を「解消」できた理由

日本は実益と同等に、礼儀と内部的な調和を重んじる社会であり、人と人との間の信頼関係が物事を左右します。日本のこの文化については、私は個人的になじみがありました。

私の祖父は植民地時代の台湾で小学校の校長を務め、両親も家庭内では日本語で会話していました。日本の文化や規範意識を、どこかしら肉親から受け継いで育ったように思います。

こういった日本特有の文化は、現代の資本市場においても確かに存在しているのだと今回のTOBで実感しました。ですから私たちは芝浦電子と日本政府に対して、できる限り誠実に対応し、信頼を得るべく努めました。どれだけ時間がかかっても、誠意を示し続けることが日本での確実な道なのだと。

芝浦電子は当初、ヤゲオの買収に賛同しませんでしたが、次第に私たちの提案に耳を傾けてもらえるようになりました。結局これまでに、双方の本社訪問や工場視察などの往来で6回にわたって面談しています。

その中で、私たちは芝浦電子の経営陣や社員の製品・技術に対する真摯さ、誠実さに触れることができ、一種の感動を覚えました。

次ページ経済産業省とのやり取り
関連記事
トピックボードAD