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――買収当事者から見た今回のTOBは、どのようなものでしたか。
今回の経験を通じて痛感したのは、日本の資本市場は米国型のそれと大きく異なるということです。ヤゲオはこれまでに欧米で大型の企業買収を手がけてきました。
特にアメリカでは、電子部品の老舗ケメットを買収(2020年、買収額約16億ドル)し、CFIUS(対米外国投資委員会)の審査もクリアしています。アメリカの資本市場では株主利益が徹底して追求され、台湾企業の買収でもこの姿勢は変わりません。
これに対して日本の企業買収で求められたのは、株主の利益「だけ」ではありませんでした。
日本政府の懸念を「解消」できた理由
日本は実益と同等に、礼儀と内部的な調和を重んじる社会であり、人と人との間の信頼関係が物事を左右します。日本のこの文化については、私は個人的になじみがありました。
私の祖父は植民地時代の台湾で小学校の校長を務め、両親も家庭内では日本語で会話していました。日本の文化や規範意識を、どこかしら肉親から受け継いで育ったように思います。
こういった日本特有の文化は、現代の資本市場においても確かに存在しているのだと今回のTOBで実感しました。ですから私たちは芝浦電子と日本政府に対して、できる限り誠実に対応し、信頼を得るべく努めました。どれだけ時間がかかっても、誠意を示し続けることが日本での確実な道なのだと。
芝浦電子は当初、ヤゲオの買収に賛同しませんでしたが、次第に私たちの提案に耳を傾けてもらえるようになりました。結局これまでに、双方の本社訪問や工場視察などの往来で6回にわたって面談しています。
その中で、私たちは芝浦電子の経営陣や社員の製品・技術に対する真摯さ、誠実さに触れることができ、一種の感動を覚えました。
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