台湾が「日本の電子部品」を欲しがる理由。台湾企業による日本企業のM&Aは新フェーズに突入

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ヤゲオの陳泰銘会長
台湾電子部品大手、ヤゲオの陳泰銘会長(写真:ロイター/アフロ)
半導体や家電など日本の電機産業は凋落の歴史をたどったが、電子部品は高い競争力を保ち、日本勢が世界生産額の3割超を占める。その強さの源にあるのが独自の経営戦略だ。村田製作所、TDK、ミネベアミツミ――。彼らの流儀から何を学べるか。『週刊東洋経済』7月19日号の第1特集は「電子部品、最強烈伝。」だ。
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不屈不撓(とう)──。強い意志のもと決してくじけないことを意味する四字熟語が、台湾の経済紙で見出しを飾っている。

口にしたのは、台湾の電子部品大手、ヤゲオ(国巨)の創業者である陳泰銘・董事長(会長)。5月に開催された同社の株主総会の場で、日本の電子部品メーカー、芝浦電子に仕掛ける「同意なき買収」について、何があってもやり切る姿勢を鮮明にした。

芝浦電子をめぐっては、ヤゲオとミネベアミツミの間で「買収合戦」が繰り広げられている。ヤゲオが芝浦電子を買収すると発表したのは2月のこと。その後4月にはミネベアミツミがホワイトナイト(友好的な買収者)として名乗りを上げた。相互に買収価格を引き上げ合い、現時点ではヤゲオが1株当たり6200円で5月から買い付けを開始。ミネベアミツミは5500円でTOB中だ。

ミネベアミツミの貝沼由久会長CEOは「日本の優れた技術を守る」としてヤゲオと徹底抗戦する構えを見せ、「外為法上の疑義がある」とその買収姿勢を批判する。

実際、ヤゲオは外為法の審査が滞り、TOB期間の延長を繰り返す。7月1日には審査期間が延びるとしてTOB期間を9日から15日まで延長すると発表した。

高いハードルがあるにもかかわらず、ヤゲオが芝浦電子の買収を諦めないのはなぜか。それはひとえに、芝浦電子の持つ技術にうまみがあるからだ。

芝浦電子の技術の「核」

芝浦電子は温度センサーで世界シェア約13%と首位を走る。温度変化によって電気抵抗値が変わる半導体、サーミスタを用いた温度センサーの専業メーカーで、技術の核心であるサーミスタ素子は福島県の工場で集中生産している。

温度センサーは自動車から家電、ロボット、産業機器まで温度変化に反応する機能がある機器に使われている。芝浦電子の製品は素材の段階から高い技術と品質があると定評を得ている。

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