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「人生というホームからの最後の転落防止柵」を目指すNPO――ホームレス支援から広がる裾野、無料個室シェルターで貧困の連鎖防止に挑む

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認定NPO法人「ホームドア」創業者の川口加奈氏。団体名には「誰もがただいまと帰ることのできる温かいホーム(=居場所)への入り口」「人生というホームからの最後の転落防止柵」との願いが込められている(写真:ホームドア)

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NPOの実態は玉石混淆ともいわれるが、認定NPOはガバナンスや情報公開の義務と引き換えに、寄付に対する税控除を認められた団体だ。全国に約5万あるNPOのうち、認定を受けているのは約1200団体。本特集では、NPOや社会起業家の現状を正しく知り、理解を深める手がかりとして、活動内容や理念、財務、ランキングデータなどを取り上げていく(末尾に法人の概要を掲載しています) 。

大阪を拠点に、ホームレス状態にある人々を支援する認定NPO法人「Homedoor(ホームドア)」。創業者である川口加奈氏は14歳でホームレス問題に出会い、大学在学中の20歳で団体を立ち上げた。

「知ってしまったからには、知ったなりの責任がある」と川口氏は語る。

ホームドアの活動内容は、シェアサイクル「HUBchari(ハブチャリ)」や相談事業、夜回り、シェルター運営など多岐にわたる。

2024年度の経常収益は2億8109万円。そのうち69.6%がシェアサイクル事業を中心とする事業収益、23.6%が寄付金だった。残りの6.8%は財団からの賞金や助成金となっている。

活動の核となるのが、無料の個室シェルター「生活応援施設」事業。原則2週間の短期滞在を目的とした「アンドセンター」(18室)と、より長期の支援を可能にした「アンドベース」(24室)の計42室を運営する。

共同生活よりも路上を選ぶ切実事情

ホームドアは設立から15年で、延べ6604人の相談に乗り、1772人に宿泊を提供してきた。かつては60代男性が中心だった相談者も、今では平均年齢が42.2歳に下がり、そのうちの4分の1を女性が占める。中には10代、20代で、虐待や貧困など過酷な生育環境を抱える若者も少なくない。

民設民営で42部屋の宿泊場所を持っている団体は極めて限られる。他のNPO団体や自治体からの受け入れ要請も少なくない。

「行政が提供する施設は相部屋が基本だが、精神的な困難を抱える人にとって共同生活はハードルが高い。『それなら路上のほうがましだ』と感じる人もいる」(川口氏)

個室シェルターのニーズは高く、稼働率は6割から満床で推移しているという。月間の相談数は約100件にのぼり、満床の場合は団体負担で近隣のホテルを手配するほどだ。

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