個室支援は、資金繰りとの戦いでもある。賃貸物件で運営する「アンドセンター」の毎月約100万円の家賃負担は、サポーターからの寄付で維持している。

一方で「アンドベース」は長期滞在を可能にするために、元ホテルを約5億円で自社物件として購入した。
金融機関からの融資3億円(毎月約150万円)の返済が重くのしかかる。これが赤字要因となり、4月には緊急のクラウドファンディングで3000万円を集め、活動の危機を乗り越えたばかりだ。
川口氏は「プライバシーを守りつつ孤立させない支援には、自社物件が必要だった」と語る。1棟丸ごと運営することで、効率的かつスタッフの目が行き届きやすくなる。
ワンルームアパートをそれぞれ借り上げる形では、必要なときに支援が介入しにくくなるおそれがある。賃貸にはオーナーの意向に左右されるリスクもつきまとう。
大人の困窮は「自己責任」なのか
寄付集めは年々厳しさを増している。「大人の困窮者支援は『自己責任論』と結びつけられやすく、企業の賛同を得にくいのが現状」という。
寄付の9割は個人からだが、昨今の物価高で「心苦しいが寄付をやめる」という声も増えた。2023年度は「アンドベース」開設という大きな投資があったにもかかわらず、寄付額は前年比で98%に減少した。
活動を続ける中で見えてきたのは、公的支援の限界だ。日本では、ホームレス自立支援法に基づく施設があるが、相部屋が基本。さらに大阪では住所がないと生活保護が受けられないという運用上の壁が存在し、多くの人が支援からこぼれ落ちていた。
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