日本経済は依然としてインフレ率の高止まりが続いている。足元でやや落ち着いてきたとは言え、食料品や日用品の値上げが家計を直撃している。
背景には、円安や原材料価格の高騰によるコストプッシュ型のインフレがあるが、政府はこの構造を転換し、デマンドプル型のインフレへの移行を目指している。
高市早苗首相は11月の経済財政諮問会議で賃金と物価の好循環を実現し、企業収益の改善が家計所得に波及することで、持続的な需要主導の成長を確保することが重要だと述べた。この発言は、単なる価格転嫁ではなく、所得増加を伴う健全なインフレへの転換を政策の柱とする姿勢を示している。
しかし、現実には賃金上昇は限定的で、家計の負担感は強まる一方である。こうした状況下で、家計が値上げをどの程度許容しているのかという議論が再び注目されている。
黒田前総裁の問題発言が示した「値上げ耐性」の低さ
このテーマは、2022年6月に黒田東彦前日銀総裁が家計の値上げ許容度も高まってきていると発言したことで一躍脚光を浴びた。
当時、食料品や生活必需品の値上げが相次ぎ、SNSでは「#値上げ受け入れてません」がトレンド入り。野党やメディアからも批判が集中した。
黒田氏の発言は、アンケート調査で「値上げ後も同じ店で買う」と答えた割合が増えたことを根拠としていた。しかし、専門家からは積極的な許容ではなく、選択肢の欠如による諦めとの指摘が相次いだ。
日銀自身が行っている「生活意識に関するアンケート調査」では、物価高は「どちらかと言えば、困ったことだ」と回答する割合が80%強に達しており、家計の実態との乖離が鮮明だった。黒田氏は発言の翌日、国会で誤解を招いた表現で申し訳ないと陳謝し、発言を事実上撤回した。
この一連の騒動は、日本社会における「値上げ耐性の低さ」を改めて浮き彫りにした。




















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