日本経済をめぐって、一つの「謎」がある。
それは、個人消費はコロナ前の水準を依然として下回り続けている(日本銀行・消費活動指数)にもかかわらず、企業の人手不足感は相応に強いことである。
実際に、日銀短観の雇用人員判断D.I.は9月時点マイナス36(マイナスであれば人手不足を感じている企業が多いことを示す)であり、コロナ前ピーク(マイナス35)と同等の人手不足感を企業が感じている。特に非製造業では9月時点マイナス44でコロナ前ピーク(マイナス40)を超えている。
労働時間の減少は、働く人の数増加で相殺されている
この謎に対する一つの解は、供給側、労働投入量そのものの減少である。
直近7~9月期の内閣府の潜在成長率の推計によれば、1人当たり労働時間がマイナス0.3%ポイントの下押し寄与となっている。1人当たりの労働時間が減っていることが人手不足の要因になっているということだ。
高市早苗首相が労働時間規制の緩和を検討する旨を示していることも、労働時間が供給能力の制約になりつつあるとの問題意識があるのだろう。
ただし、一方で就業者数は2025年7~9月期に0.2%ポイントの押し上げ寄与となっている。女性・高齢者・外国人労働者などに支えられる形で、人口減少が続く中でも働く人の数は依然として増え続けている。これが労働時間の減少を相殺する形で労働投入量全体の減少は一定程度抑制されている。
本稿が提供したいのは、ここに「需要側」の消費構造変化が影響し始めているのではないか、という視点である。すなわち、消費の中身が「モノ」から「コト」へとシフトしていることだ。




















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