世界4000人のうち、日本は8人のみ!社会起業家が育たぬ残念な事情…NPO活動をめぐる「ボランティア」「情報開示」の誤解

「2019年の母子保健法改正後、産後ケアが当たり前になってきました」
1998年に吉岡マコ氏は、日本で初めて産後女性をケアする活動を開始した。2008年にはNPO法人マドレボニータを設立し、2020年の代表交代に伴い退任。直後にNPO法人シングルマザーズシスターフッドを立ち上げ、現在はシングルマザーのセルフケア支援に専念している。
吉岡氏は、日本でも数少ない連続社会起業家だ。今年6月には、新たにASHOKA(アショカ)・フェローに選出された。世界最大の社会起業家ネットワークであるアショカは、一流の社会起業家の発掘・支援などを行っている。2025年2月時点で約4000人のアショカ・フェローがいるが、このうち日本人は8人にとどまる。
スタートアップ起業家が社会変革とともに成長ともうけを目指すなら、社会起業家のゴールとは何なのか。吉岡氏にたずねると「社会の仕組みや、人々の考え方を変えるのが目標」と答えた。
NPOへの理解が進まない背景
非営利団体であるNPO法人は、社会貢献活動を目的としている。彼らの活動を支える原資は寄付や会費、助成金、事業収益などだ。このうち市民による寄付が柱だが、個人寄付市場全体がアメリカの34兆円に対して日本は1.2兆円にとどまるうえ、NPOに向けられるのはそのうちの一部にすぎない(関連記事、【独自調査】玉石混淆のNPO「寄付金」収入の実態)。
背景には税制や文化的背景など複数の要因があるが、最も大きな障壁は「イメージ」かもしれない。
NPO活動をめぐり「胡散臭い」「実態がわかりづらい」と、不信の目を向ける人は少なくない。何か問題が起こると団体の規模に関係なく「助成金を受けているのに」「偽善だ」などと厳しい目を向けられるのは、非営利団体ゆえだろう。
冒頭の吉岡氏は「実際の活動の中で、連携している企業名を打ち出す機会は多い」と語る。助成金を受けているアメリカン・エクスプレスやナイキなど、連携先の大企業を明記することで周囲からの見られ方は変わってくるという。
関西大学で政治学やNPO・NGOの研究などを行う坂本治也教授は「学校法人や医療法人も非営利組織であり、生活に根付いた存在。それに対して日本ではNPOの存在が理解されていない」と指摘する。
そのうえで「社会のさまざまな領域で本当に困っている人がいるが、政府や自治体の定型的な対応には限界があり、NPOの行動力が必要とされている」(坂本教授)と続ける。
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