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塾に行けない子どもに居場所を届ける――東京・下町の小さな教室から広がるNPO「キッズドア」の取り組み、困窮子育て家庭の叫びを国へ提言

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東京の下町で子育てを経験してきた、認定NPO法人キッズドアの渡辺由美子理事長(写真:編集部撮影)

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NPOの実態は玉石混淆ともいわれるが、認定NPOはガバナンスや情報公開の義務と引き換えに、寄付に対する税控除を認められた団体だ。全国に約5万あるNPOのうち、認定を受けているのは約1200団体。本特集では、NPOや社会起業家の現状を正しく知り、理解を深める手がかりとして、活動内容や理念、財務、ランキングデータなどを取り上げていく(末尾に法人の概要を掲載しています) 。

生活困窮世帯の中学生や高校生を中心に学習支援活動を行うのが、2009年に設立された認定NPO法人キッズドアだ。2024年度には2112人の生徒が学習会に参加した。自治体から委託を受けている学習会も多く、2024年度の経常収益16億円のうち助成金が46.3%を占める。

東京の下町で子育てをしてきた渡辺由美子理事長が直面したのが、子どもの貧困だった。習い事や塾通いに忙しい子ども達の中で、夏休みにどこへも行かず、スポーツもやっていない子どもがいた。兄弟が多く、親は仕事で忙しいため学校行事に顔を出せない。

「公立高校に行けないなら高校進学を諦める」という家庭があることを知り、渡辺氏は中学生向けの学習会を開始した。無事に彼らを高校へ送り出すことができたが「ものすごい勢いで中退していった」(渡辺氏)。

私立高校の実質無償化でも、ニーズは減らなかった

学習会に通って高校進学した19人のうち4人は1年生の夏に中退し、勉強がわからずに高校から肩をたたかれている子どもは3~4人いた。高校生になっても家庭環境が変わるわけではない。勉強を続ける場所の必要性を痛感し、高校生向けの学習会も開始することとなった。

現在、キッズドアに通うのは、高校生や高校中退者など15~20歳がいちばん多い。中学生は高校進学を目標にできるが、高校生向けの学習支援には異なるスキルが必要だ。就職と進学の違いを伝えた上で、アドバイスの内容も変わってくるからだ。

東京都では2024年度から私立高校の授業料が実質無償化された。環境は整備されつつあるが「キッズドアを頼る子供はぜんぜん減らない」と渡辺氏は語る。行政の支援対象となる住民税非課税世帯などに該当しなくても、生活が苦しい家庭は数多い。

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