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葉山町ホテル開発の許可獲得に向けた設計会社の口車と、それにやすやすと乗っかり「許可」を出した神奈川県"お役所仕事"のお粗末

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奥に見えるのが開業延期中のホテル「Casa CABaN HAYAMA」、右が日動画廊所有地。開発許可を得るためにトゥモローランド側が道幅を広げた形跡が残る(住民撮影)
皇室「御用邸の町」として知られる神奈川県葉山町。時間がゆったりと流れる海辺の町に魅了される人は今も昔も数多く、ある不動産会社が実施した「住み続けたい街ランキング」首都圏版では5年連続でトップに立っている。
ところが今、その町が揺れている。ある住民が「葉山の豊かな日々が消し飛ばされた」と憤激するその原因は、海岸線沿いに建設された豪奢なホテルだ。住民が建設に強く反発する理由は一つや二つではなく、無数にある。怒りの矛先は事業者、設計会社のみならず葉山町、神奈川県にまで向けられている。
葉山の波は鎮まるのか。ジャーナリスト、田中周紀氏による連載企画「波乱 御用邸の町『葉山』住民の憤激」第3回は、お手盛りの図面を許認可庁である県に提出した設計会社の手口と、現地を確認することもなく、やすやすと開発許可を出した神奈川県の“お役所仕事”ぶりを取り上げる。
第1回 御用邸の町「葉山」の豪奢ホテルに住民が憤激
第2回 葉山町「いわく付きの場所」でホテル開発の手口
第3回 葉山町ホテル開発許可に向けた設計会社の口車(本記事)

風光明媚な葉山町の森戸海岸沿いに計約1940㎡の土地を取得したアパレルメーカー、トゥモローランド(東京都渋谷区、佐々木啓之代表取締役会長)は2019年12月2日、同町まちづくり条例に基づき「トゥモローランドホテル事前相談」を同町に提出。ここから高級リゾートホテル「Casa CABaN HAYAMA」の建設計画が本格的に動き出す。

それから約1年半が過ぎた21年5月26日。ホテルの設計を請け負った久米設計(東京都江東区)設計本部のM氏と、その部下のT氏が葉山町役場の都市経済部を訪れた。この訪問についてM氏は道幅の計測方法について相談に行ったと、25年3月21日開催の近隣住民との2者協議で説明している。「垂線や(円の)半径、直径などいろいろあるうちのどれで測ればよいのかという話を聞きに行った」と。

葉山町は「規定」だけを伝えた

道幅の計測方法には大きく分けて、①一方の道路境界線から反対側の道路境界線に向けて垂線を引く、②道路の中心線から左右に垂線を引く――という2つがあるのは、前回も述べた。②では例えば幅4mの道路でクランク状の箇所がある場合、中心線上にコンパスの脚を立てて半径2m(直径4m)の円を描き、これを進行方向に転がすことで車両が円滑に通過できるかが確認できる。ただ、そのどちらを計測に使うのかについての明確な規定はない。

葉山町はまちづくり条例で「開発事業区域の面積が1000㎡以上1万㎡未満の場合、開発事業区域と接する主要道路は当該開発事業区域の反対側の道路境界線からの距離が6m以上確保されるよう拡幅整備されるものとする」と定めている。久米設計との面談で、葉山町は道幅を計測する際に①と②のどちらを使うのか尋ねられた都市経済部道路河川課(当時)の阿比留正輝職員は、「各点より垂線で計測して幅が確保できていればよい」と回答したが、これはこの規定を忠実に伝えたまでのことだった。

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