
2024年元旦の能登半島地震――。現場に一番に到着したのは、認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)のスタッフだった。大西健丞代表は「自衛隊も含めて、PWJのヘリコプター、車両、船の入港どれもが一番乗りだった」と胸を張る。
PWJの原点は、海外の紛争地支援にある。1996年の設立以来、2025年1月までに41カ国・地域で活動してきた。災害支援船2隻、ヘリコプター2機、ジェット機を有し、災害時にはいつでも出動できるマインドセットを組織に浸透させている。
大西氏は「個人的には8回くらい紛争地帯で活動してきた。判断のスピードが遅かったら死んでしまう」と語る。「いかに命を救うか」というノウハウを、極限状況での実践と経験から培ってきた。
2010年に災害救助犬チームの設立に動き出したとき、新たな問題に直面した。提携先を探して訪れた動物愛護センターでは、オートメーション化されたガス室で年間3700匹もの犬や猫が殺処分されていたのだ。
殺処分ゼロへ、赤字覚悟で飛び込んだ動物愛護事業
「ナチスドイツのアウシュビッツよりも生還率が低い。『愛護センター』とは名ばかりの処分センターだった」(大西氏)。2011年には「何とかしたい」という一心で、犬の殺処分ゼロを目指して「ピースワンコ・ジャパン」を立ち上げた。
問題は資金だった。犬を保護するシェルターを準備するには、設備投資が必要となる。「最初の年は収入900万円に対し、支出が1億3000万円」(大西氏)と、桁違いの費用先行でプロジェクトはスタートした。
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