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トランプ政権の支援縮小で、予算12億円が消失――人道支援から災害支援、現代アートによる地方創生まで担うNPOの新たな挑戦

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SNSでシェルターのありのままの姿を発信し続けるうちに、その活動に共感が集まり、毎月1000円、2000円を寄付する個人のサポーターが着実に増加。かつて殺処分数が全国で最も多かった広島県で、2016年から殺処分機の稼働を止めるという成果を上げた。

2025年1月には保護猫事業も本格化し、徳島県と共に殺処分ゼロを目指す取り組みを進めている。

PWJの活動は幅広いが、なぜか現代アートの最高峰ともいえるゲルハルト・リヒターの作品を所有している。この作品は、瀬戸内海に浮かぶ愛媛県の無人島、豊島(とよしま、香川県の豊島とは別の島)で毎年期間限定で一般公開されている。公開期間中には1日2回の定期便で、国内外から作品を目当てにしたファンやアーティストが訪れる。現代アートを地方創生に生かしている。

カタール王妃に競り勝った、現代アートという「勲章」

きっかけは、芸術家本人との面会だった。大西氏はリヒターに3度会い、芸術の話はほとんどせず、自らが経験してきた紛失地域の生々しい現実を語った。

当時、リヒターが制作できる大作は年に1つ。その貴重な作品をめぐる競争相手は、潤沢なオイルマネーを誇るカタールの王妃だった。彼女が「プライスレス(値段はつけられない)」と購入を申し出たのに対し、大西氏は「ゼロ」。つまり作品の譲渡を願い出た。

結果は、大西氏が選ばれた。「リヒターも最後は、お金じゃない、と」(大西氏)。そうして譲り受けたのが、『dedicated to futility(無益に捧げる)』と題された14枚のガラスからなる作品。サザビーズによればその評価額は20億円に相当するというこの作品は、豊島で無料公開されている。

「カタールの王妃と競り勝ったのは、ファンドレイザーとして勲章。お金ではなく、共感を選んでもらったということ」(大西氏)。共感はPWJの活動の成り立ちそのものであり、それを象徴するエピソードと言えるだろう。

海外での人道支援から国内での災害支援、動物愛護、そして地方創生まで。なぜこれほどまでに事業を多角化してきたのか。大西氏はその理由を「日本には、公益に関わる分野で民間の担い手が少なすぎる。ニーズがほったらかしの『ブランクマーケット』だらけだから」と説明する。

新たな社会問題に行政サービスでは対応しきれない「空白」があれば、そこに比較優位性を見出して乗り出してきた。

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