PWJの30年にわたる活動は、寄付者層の変化と共に変遷してきた。当初は国際協力に熱心な企業経営者などが中心だったが、動物愛護事業の成長で個人の小口寄付が急増。2014年度は9.3%だった寄付(ふるさと納税を含む)は、10年後の2024年度に53.3%となった。
活動の重点も大きく変化した。かつて海外での人道支援などが中心で、海外活動の予算が国内を上回っていたが、現在その比率はほぼ半々である。
今後も海外の政府開発援助(ODA)は減少方向にある。ルビオ米国務長官は、7月1日に外国への人道支援を担う国際開発局(USAID)の事業を停止する旨を発表。PWJは約12億円の予算が突如消えるという事態を経験した。

一方で、国内支援へのニーズは高まっている。日本各地で災害が多発する中、PWJは真っ先に現地へ駆けつけて救助活動にあたる体制を整えている。保護犬事業も寄付者が増えており、活動拠点を増やしている。
ただし国内の災害支援では「日本政府から1円ももらっていない」(大西氏)。活動資金のすべては寄付などの自己資金で賄われる。行政から要請されて活動しても費用弁償すらないという。
スタートアップの起業も構想中
国に頼らない代わりに、PWJは経済界との連携に活路を見出している。災害支援船は、スタートアップ経営者らが組成したSPC(特別目的会社)が購入し、PWJがリースしている。NPOの財務を圧迫しないスキームで、大規模な支援体制を可能にしている。大西氏は、2024年にNPOトップとして初めて経済同友会の副代表幹事に就任した。
一方で大西氏は、NPOという組織に限界も感じている。特に保護犬事業のような設備投資が先行する事業では、金融機関からの借り入れがネックとなる。「年間75億円の事業規模があっても個人事業主と同じ扱い。毎月の寄付者が何万人もいて、10年分のデータで継続率を証明しても、まったく評価されない」。
この課題を乗り越えるため、大西氏はスタートアップの起業も構想しているという。営利企業として資金調達を行い、事業として回る仕組みを設計する。利益相反を起こさない形でNPOであるPWJが、その仕組みを利用する。社会課題解決のスケールとスピードを上げるには何が最適か、思索を続けている。
以下では、ピースウィンズの概要や企業との連携などを紹介する。
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