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ミネベアミツミ貝沼会長、芝浦電子のホワイトナイトは「天から降ってきた大チャンス」→打診から3カ月足らずの電光石火で進んだ交渉の内幕

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かいぬま・よしひさ 1956年生まれ。慶応大学法学部卒業、アメリカ・ハーバード大学ロースクール修了。1988年ミネベア(現ミネベアミツミ)入社。2009年社長就任、2023年から現職(撮影:尾形文繁)
温度センサー世界首位の芝浦電子の賛同を得て、同社へのTOB(株式公開買い付け)を4月10日に表明したミネベアミツミ。完全子会社化を目指し、4月23日から1株4500円でTOBを開始する。
芝浦電子は台湾の電子部品大手・国巨(ヤゲオ)から「同意なき買収」を提案されており、ホワイトナイトとしてミネベアミツミが名乗り出た(詳しい経緯はこちら)。ヤゲオはその後、4月17日にTOB価格を当初の1株4300円から5400円に引き上げた。
ニッチなセンサー技術をめぐり、外資との争奪戦に発展した今回の買収劇。ミネベアミツミの貝沼由久会長CEOに参戦の意図を直撃した(インタビューはヤゲオが予定額を変更する前の4月16日に行われた)。

割高ではない

――貝沼会長が過去に手がけた約30件のM&A(合併・買収)では、直近の営業利益の10倍を買収上限額としてきました。今回は総額で約675億円かかるのに対し、芝浦電子の営業利益は51億円(2023年度)。自ら定めた基準を超えています。

営業利益の10倍までという上限は、現金を除いた額で考えている。芝浦電子は85億円のネットキャッシュを有しており、差し引くと買収額は約600億円。一方、2024年度は54億円の営業利益を見込んでいる。

この基準で考えれば、今回は11倍程度となる。めちゃくちゃに割高というわけではない。過去の事例は平均して10倍より低く買っており、芝浦電子を含めてもその水準はキープできる。

――とはいえ、今回が「例外」なのも事実です。上限額を超過しても買おうと決めたのはなぜですか。

ここで押さえなければ、もう二度と芝浦電子を手に入れることはできない。当社は8分野のコア事業を選定し、「8本槍」と名乗っている。ベアリングやモーターに続き、アクセス製品(自動車部品)とアナログ半導体も大きな利益を生むようになった。

次はセンサーだと思っていた矢先、1月17日に芝浦電子との面談を打診された。まさに天から大チャンスが降ってきた。そしたら拾うしかないでしょう。現状のセンサー事業の売上高は約300億円。芝浦電子が加われば700億円レベルとなり、1000億円を狙える。これはぜひ話を聞いてみたいと思った。

1月23日には芝浦電子の葛西晃社長と会った。スケジュールをすべて変更して、その席で「来週、互いの工場を視察しましょう」と私から持ちかけた。葛西社長は調整してくれて、同月28~30日にタイやカンボジアの生産拠点を一緒に回った。

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