ミネベアミツミ貝沼会長、芝浦電子のホワイトナイトは「天から降ってきた大チャンス」→打診から3カ月足らずの電光石火で進んだ交渉の内幕

割高ではない
――貝沼会長が過去に手がけた約30件のM&A(合併・買収)では、直近の営業利益の10倍を買収上限額としてきました。今回は総額で約675億円かかるのに対し、芝浦電子の営業利益は51億円(2023年度)。自ら定めた基準を超えています。
営業利益の10倍までという上限は、現金を除いた額で考えている。芝浦電子は85億円のネットキャッシュを有しており、差し引くと買収額は約600億円。一方、2024年度は54億円の営業利益を見込んでいる。
この基準で考えれば、今回は11倍程度となる。めちゃくちゃに割高というわけではない。過去の事例は平均して10倍より低く買っており、芝浦電子を含めてもその水準はキープできる。
――とはいえ、今回が「例外」なのも事実です。上限額を超過しても買おうと決めたのはなぜですか。
ここで押さえなければ、もう二度と芝浦電子を手に入れることはできない。当社は8分野のコア事業を選定し、「8本槍」と名乗っている。ベアリングやモーターに続き、アクセス製品(自動車部品)とアナログ半導体も大きな利益を生むようになった。
次はセンサーだと思っていた矢先、1月17日に芝浦電子との面談を打診された。まさに天から大チャンスが降ってきた。そしたら拾うしかないでしょう。現状のセンサー事業の売上高は約300億円。芝浦電子が加われば700億円レベルとなり、1000億円を狙える。これはぜひ話を聞いてみたいと思った。
1月23日には芝浦電子の葛西晃社長と会った。スケジュールをすべて変更して、その席で「来週、互いの工場を視察しましょう」と私から持ちかけた。葛西社長は調整してくれて、同月28~30日にタイやカンボジアの生産拠点を一緒に回った。
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