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芝浦電子に同意なき買収、台湾ヤゲオ創業者が語る「どこまで価格を引き上げる」「買収後の成長シナリオ」「受け入れがたい不公平」

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Pierre Chen 1956年生まれ。国立成功大学を卒業(工学専攻)。1985年に創業した企業を、実兄が先に立ち上げたヤゲオ(国巨)と合併。現在のヤゲオはチップ抵抗器とタンタルコンデンサで世界シェア1位、複数の電子部品を手がける。ヤゲオは売上高5835億円、営業利益率19.2%(2024年12月期)、時価総額2272億円(4月21日の終値ベース)。チェン氏はヤゲオ株の6.98%を保有するなど、個人資産総額は57億ドルで世界600位(フォーブス調べ)。ワインや芸術品のコレクターとしても有名(記者撮影)

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温度センサー世界首位の芝浦電子をめぐる、TOB(株式公開買い付け)合戦が過熱している。先に同意なき買収を仕掛けていた台湾の電子部品大手・国巨(ヤゲオ)は、4月17日に同5400円へ買い付け額を引き上げ、ホワイトナイトのミネベアミツミに徹底対抗する姿勢を示している。
なぜヤゲオは芝浦電子を買いたいのか。どこまでミネベアミツミに対抗するのか。創業者のピエール・チェン(陳泰銘)董事長に台湾・新北市の本社で緊急インタビューを行った(実施日は4月21日)。

必ず投資回収できる自信がある

――芝浦電子へのTOB価格を大幅に引き上げました。

最初に提案した4300円も、十分にプレミアムを乗せた額でした。しかし5400円に引き上げた今でも、芝浦電子に対する投資で必ず資金回収できる自信があります。

――買収総額は823億円となり、芝浦電子の営業利益(2024年3月期)16年分に相当します。投資回収に時間がかかりませんか。

芝浦電子が未来にわたって何も変わらないのであれば、その通りでしょう。しかしヤゲオが買収することで、芝浦電子の収益を別の次元へ引き上げられると確信しています。芝浦電子の技術と製品を、彼らがこれまでアクセスできなかった世界中の顧客に届けられるからです。

ヤゲオ傘下には、日本企業のトーキン(旧NECトーキン)があります。ヤゲオが2020年6月にアメリカの電子部品老舗・ケメットを買収(買収額約2250億円)した際に、その子会社として傘下に入りました。

ヤゲオはトーキンに新規顧客を紹介し、AIや宇宙など新しい分野に進出させ、設備投資を行い生産量を拡大させてきた。その結果、トーキンの営業利益は2.8倍に伸びました。

芝浦電子は優れた温度センサー技術を持っているのに、売上高の4割は日本国内、海外もほとんどが中国、アジアの日系企業向け。優良顧客が数多くいる欧米向けビジネスはわずかしかない。

確かに温度センサーで世界トップだがシェアは13%。私たちの傘下に入れば、欧米などで新しい顧客をつかみ、市場シェアを高め、トーキンのように業績を拡大することができます。

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