特集「ミネベアミツミvs.ヤゲオ 芝浦電子TOBの攻防」の他の記事を読む
壇上に立ち並び、満面の笑みで熱い抱擁を交わす2人の男。カメラのシャッター音が鳴り響く中、「相思相愛」ぶりを報道陣にアピールしたのは、台湾の電子部品大手・国巨(ヤゲオ)のピエール・チェン会長と、日本の温度センサー大手・芝浦電子の葛西晃社長だ。
ヤゲオによる芝浦電子へのTOB(株式公開買い付け)が成立したことを受けて10月21日、両社の記者会見が都内で開かれた。そのフォトセッションでの一幕だった。
芝浦電子をめぐっては「同意なき買収」を仕掛けたヤゲオと、ホワイトナイトとして参戦した日本の総合部品メーカー・ミネベアミツミとの間で争奪戦となっていた。
5月にミネベアミツミと一緒に開いた会見では「(ヤゲオとは)企業風土で大きな隔たりを感じる」などと不快感をあらわにしていた葛西社長。ただ、最後はヤゲオのTOBへの賛同に転じ、「今は(買収に)100%完全に納得している」と語った。
「本来あるべき価格」と強調
翻意を促したのは、チェン会長の「誠意」にほかならない。ヤゲオは当初、TOB価格として1株4300円を提示したが、ミネベアミツミが6200円を打ち出すと対抗して、最終的に7130円で決着した(詳しくはこちら)。
買収総額は約1100億円に上る。芝浦電子の業績予想によると、今2026年3月期の純利益は35億円、EBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)は約80億円。一般的なメーカー買収の際、上限額の目安とされるEBITDA倍率で10倍を軽く超える水準だ。
ただ、ヤゲオは高値づかみとは考えていない。チェン会長は「芝浦電子は長年にわたり、市場で不当に低い評価を受けていた。私たちは、本来あるべき価値に見合った額を示しただけだ。株主にも(正当な)リターンを与えられたと思う」と会見で強調した。



















無料会員登録はこちら
ログインはこちら