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「日台TOB合戦」終結、敗れたミネベア会長の心境、次なるM&Aに切り替え、売上高2.5兆円への道筋

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芝浦電子の買収合戦に「敗れた」ミネベアミツミの貝沼由久会長CEOは今、何を思うのか(撮影:梅谷秀司)

特集「ミネベアミツミvs.ヤゲオ 芝浦電子TOBの攻防」の他の記事を読む

台湾の電子部品大手・国巨(ヤゲオ)が、温度センサー大手・芝浦電子に仕掛けた「同意なき買収」。ヤゲオはTOB(株式公開買い付け)価格を当初の1株4300円から7130円へと大幅に引き上げ、最終的に芝浦電子からの賛同を獲得し、10月20日にTOBを成立させた(詳しくはこちら)。
ホワイトナイトとして競り合った日本の総合部品メーカー・ミネベアミツミは、祖業の小径ベアリングやアナログ半導体、モーターなど8分野のコア事業を擁する。芝浦電子を傘下に収め、グループ内で現状5番手のセンサー部門を一気に飛躍させる狙いだったが、ヤゲオの採算度外視とも取れる「札束攻勢」に屈した形だ。
2029年3月期に売上高2兆5000億円、営業利益2500億円の大目標を掲げるミネベアミツミ(25年3月期の実績は売上高1兆5227億円、営業利益944億円)。現在の心境や新たな成長戦略をどう描くのか、貝沼由久会長CEOに直撃した。

不成立という結果に何の感慨もない

――「サーミスタ」と呼ばれる温度センサーで世界シェア首位の芝浦電子とは、自社の製品群と大きなシナジーを見込んでいました。

2009年に当社の経営トップとなって以降、私は約30件のM&A(合併・買収)を手掛け、すべてを成功させてきた。陰ではボツになった話が何十件もある。感覚的には、その半分ぐらいが価格的に折り合えなかった。つまり、私の考える適正価格より高かった。

たとえシナジーを見込めたとしても、ビット(入札)で負けることは日常茶飯事。普段はクローズドでの出来事だが、今回はたまたま表(TOB)に出たから注目されただけ。不成立という結果に対して、私としては何の感慨もない。

――ヤゲオに対する外為法上の審査が長引き、TOB合戦は異例の長期戦となりました。不透明な状況の中で押し引きを判断する難しさはありましたか。

それはあった。審査の行方がどうなるのか、誰にもわからない。そんな状況の中で(価格の引き上げ競争を)やらねばならず、特殊な事例だった。ただ、自分としては後悔のない道を選べた。その時々に応じたベストの判断を下せたと思う。

私は過去、M&Aに関する後悔が一度もない。買った約30社で高値づかみはゼロ。ボツになった案件で、「もっとお金を出してでも手に入れるべきだった」と感じる会社もない。逆に後で「買わないと決めてよかった」と思ったケースはたくさんある。

もしかしたら、芝浦電子は初めての後悔になるかもしれない。でも、それは今の時点ではわからない。結果が出るのは5年ほど先だろう。

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