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不成立という結果に何の感慨もない
――「サーミスタ」と呼ばれる温度センサーで世界シェア首位の芝浦電子とは、自社の製品群と大きなシナジーを見込んでいました。
2009年に当社の経営トップとなって以降、私は約30件のM&A(合併・買収)を手掛け、すべてを成功させてきた。陰ではボツになった話が何十件もある。感覚的には、その半分ぐらいが価格的に折り合えなかった。つまり、私の考える適正価格より高かった。
たとえシナジーを見込めたとしても、ビット(入札)で負けることは日常茶飯事。普段はクローズドでの出来事だが、今回はたまたま表(TOB)に出たから注目されただけ。不成立という結果に対して、私としては何の感慨もない。
――ヤゲオに対する外為法上の審査が長引き、TOB合戦は異例の長期戦となりました。不透明な状況の中で押し引きを判断する難しさはありましたか。
それはあった。審査の行方がどうなるのか、誰にもわからない。そんな状況の中で(価格の引き上げ競争を)やらねばならず、特殊な事例だった。ただ、自分としては後悔のない道を選べた。その時々に応じたベストの判断を下せたと思う。
私は過去、M&Aに関する後悔が一度もない。買った約30社で高値づかみはゼロ。ボツになった案件で、「もっとお金を出してでも手に入れるべきだった」と感じる会社もない。逆に後で「買わないと決めてよかった」と思ったケースはたくさんある。
もしかしたら、芝浦電子は初めての後悔になるかもしれない。でも、それは今の時点ではわからない。結果が出るのは5年ほど先だろう。



















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