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〈甘すぎた試算〉暗礁に乗り上げた"さいたまアリーナ計画" 「到底黒字は見込めない」「より堅めの計画を」…突如浮上した構想、企業からも厳しい指摘

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さいたま市が計画するアリーナの建設候補地周辺。子育て世帯の流入が多く、住民1人当たりの公園面積が市の平均を大きく下回るエリアだ(記者撮影)

突如立ち上がったアリーナ計画は、暗中模索している。

さいたま市は今年6月、1月に公告した次世代型スポーツアリーナの入札について、参加者から辞退届が提出されたため、手続きを中止すると発表した。市は不調の原因究明を進め、施設の整備に向けて早期に対応方法を決めるとしている。

建設予定地である与野中央公園(さいたま市中央区)は、JR埼京線の与野本町駅から徒歩10分、さいたまスーパーアリーナからは約2kmの場所にある。約8.1ヘクタールの敷地に、VIPエリアなどを備えた観客席5000人以上のメインアリーナや、市民が利用するサブアリーナなどを建設する計画で、2029年12月の開業を目指している。

入札は市が事業者に設計から施工、開業後30年間の維持管理、運営などを一括発注する方式で、予定価格130億円で公募していた。市によると、「事業者からは、急激な物価高騰による事業費と予定価格との乖離を指摘する意見があった」という。

企業から相次いだ厳しい指摘

計画の甘さへの懸念は以前からあった。市は2023年5月に基本計画をまとめた段階では、事業費を52億円と試算。ところが市民の情報公開請求によって開示された記録を見ると、入札への参加意向を持つ企業と市の間で昨年4月に実施された対話において、次のような声が相次いでいた。

「5000人規模では収益回収できない。到底黒字は見込めない」(金融機関)「興行イベントが現在の想定数実施できるとは考えにくい」(運営会社)「都内・県内で競合施設も多くあるため、より堅めの事業計画を立てる必要がある」(設計会社)

これらの指摘も踏まえ、昨年11月、市は事業費を2.5倍の130億円に増額した。しかし足元では、事業実現に必要なコストはそれをも上回る水準にまで増えている。

次ページ当初は公園の拡張計画だったが…
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