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「アリーナブーム」の先駆けとなるはずだった豊橋市ではついに住民投票実施へ。なぜ計画は迷走が続くのか

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豊橋公園内に建設予定の新アリーナ(多目的屋内施設)のパース。この計画の賛否をめぐって住民投票が行われる(出所:豊橋市作成資料)

特集「アリーナ建設ラッシュの光と影」の他の記事を読む

豊橋市(愛知県)、向日市(京都府)、さいたま市(埼玉県)ーー。全国各地で新しいアリーナ・スタジアムを建設する計画が進んでいる。しかし、住民や議会の反発などの壁にぶつかっている計画も少なくない。本連載では、ジャーナリストの関口威人氏が各地のアリーナ計画の関係者を取材。その課題を浮き彫りにしていく。まず第1回は、2025年7月の参院選と同日で計画の是非を問う住民投票の実施が決まった豊橋市の事例を取り上げる。

号砲が撃ち鳴らされたのは8年ほど前だった。2017年3月に首相官邸で行われた「未来投資会議」で、佐原光一・豊橋市長(当時)は安倍晋三首相を前にこうプレゼンテーションした。

連載第2回は京都アリーナを予定しています

「地域経済発展の起爆剤として機能する新アリーナについて、2020年代初めの建設を目指して努力をしているところです」

愛知県南東部の豊橋市には、港湾部に1989年に竣工した市総合体育館がある。この体育館は、プロバスケットボール・Bリーグの開幕に伴い、2016年から地元チーム「三遠ネオフェニックス」のホームアリーナになっていた。しかし、市中心部から約5キロメートル離れた立地や老朽化、そしてBリーグ1部(B1リーグ)の施設基準を満たさないという課題があった。

折しも東京五輪を控え、国はスポーツを成長産業と位置付け、従来のスポーツ施設を超えたスタジアム・アリーナ整備を促進する方向性(スタジアム・アリーナ改革)を打ち出していた。佐原市長はこの流れに乗り、中心市街地活性化を狙って城址公園である豊橋公園内に新アリーナ(多目的屋内施設)を建設する構想をまとめたのだ。

「ローカルアベノミクスの深化」と評価

当時は安倍首相が独自の経済政策・アベノミクスを推し進めており、豊橋市の構想を官邸側は「ローカルアベノミクスの深化」と評価。会議の最後に安倍首相自ら、豊橋のようなアリーナ・スタジアムを「2025年までに20カ所整備する」と明言した。

これが実質的に、全国的な“アリーナ建設競争の号砲”であり、上表のように全国でアリーナ建設計画が進んでいる。しかし、住民や議会の反発などの壁にぶつかっている計画も少なくない。豊橋市にとっても市民の分断を招く長い迷走の始まりとなった。

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