巨額のETFを100年以上かけて市場売却。売却益と分配金が日本の財政を大きくサポートする可能性も。

日本銀行は9月19日の金融政策決定会合で、保有するETF(上場投資信託)を100年超の期間をかけて市場で売却することを決定した。日銀は保有ETFの処分を行う場合の基本方針として(1)ETF等の市場情勢を勘案し、適正な対価によること、(2)日銀の損失発生を極力回避すること、(3)ETF等の市場に攪乱的な影響を与えることを極力回避することを定めていた。
市場売却により(1)の適正な対価での売却が可能となる。ETFを長期保有すれば企業業績の成長に伴い価格の上昇が見込まれるため(2)の損失発生の可能性が低下する。100年超の期間をかけた少額ずつの売却で(3)のETF等の市場に攪乱的な影響を与えることを極力回避可能できる。上述の基本方針に照らして合理的な処分方法と評価できよう。
推計時価82.7兆円超の日銀保有ETF
ほかの処分方法として、①政府への売却、②GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)への売却、③国民への売却等がメディアにおいて議論されていたが、①の政府への売却は、9月末時点で時価が82.7兆円超と推計された日銀保有ETFを政府が一括購入するには多額の国債発行が必要となるため、難しかったと考えられる。
②は、GPIFの日本株保有金額は2025年6月末時点で64.1兆円と日銀保有ETFの金額を下回る。また仮にGPIFが日銀保有ETFを日銀から購入しても、GPIFが同額の保有日本株を売却すれば株価が短期的に大幅に下落すると考えられた。③の国民への売却を、不公平感のない形で実施することは実務上難しかったと想像される。ほかの処分方法が難点を抱えていたことからも今回の処分方法は妥当と評価できよう。
日銀がETF買い入れを決定したのは、白川方明総裁下の10年12月だった。当時、日本株価の下振れリスクが意識され日銀保有ETFは同行の財務にマイナスの影響を与えるとの危惧が大きかった。それから約15年経過し、2つの経路から同行の財務にポジティブな影響を与えるとみられている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら