日銀は「円安」「国債の山」「次の緩和」をどうするか 物価の権威・渡辺努に小幡績が迫る【後編】

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渡辺努・東京大学教授(左)に小幡績氏(右)がとことん聞いた(撮影:梅谷秀司)
物価が上がることがなぜ日本に必要なのか。どうして異次元緩和を10年続けても物価に効かなかったのか。
著書『物価とは何か』をはじめ、物価研究の権威である渡辺努・東京大学大学院経済学研究科教授。リレー連載「新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場」が人気の小幡績・慶応義塾大学大学院教授。2人は東京大学経済学部でゼミの先輩・後輩にあたる旧知の仲だ。
小幡氏は自称「渡辺努ウォッチャー」。かねて物価をめぐる渡辺氏の発信を追ってきたという。「僕もまだ渡辺理論をわかっていないところがあるし、世間ではちゃんと理解されていないと思うので、とことん聞きたい」。
前編の「『物価が上がらなければいいのに』と嘆く人たちへ」に続いて、後編では金融政策の行く末から、次なるデフレ対策まで話が及んだ。

小幡 3月に日銀は異次元金融緩和の枠組みを終了しました。日銀はとにかく異次元緩和の異常な政策をやめたかった。だから、春闘の賃上げで言い訳が整ったからやめるけれど、普通の緩和は続ける。今後は普通の景気調節として利上げできるようになったら、利上げする、と宣言したのだと。

渡辺 異次元緩和は効かなかったから、やめても何も起こらないことには同意します。

小幡 これは私が渡辺さんに唯一勝った?(笑)ところです。10年前、私が「異次元緩和をやっても無駄で副作用だけがあるから、やめましょう」と言っていたのに、渡辺さんは「いや、挑戦してみる価値はあります」と言っていました。この10年で考えは変わりましたか。

国債は「要るモノ」か、「負の遺産」か

渡辺 事実として全然うまくいかなかったから、失敗したとは思います。2016年1月に導入したマイナス金利の評判が悪かった頃からそう思い始めました。効いてほしかったですが、結果的に効かなかったのだから、明らかに無用の長物です。

海外の人には、3月の日銀の決定は、要らないモノを捨てる「断捨離」なんだと説明しています。断捨離のポイントは、要るモノと要らないモノを区別することです。要るモノとして残したのが、バランスシートです。バランスシートが大きい状態はやっぱり望ましいんですよ。

小幡 そこは私はまったく反対で、植田総裁はバランスシートを「遺産」と言いましたが、それは「負の遺産」という意味だと思っています。

マーケットの人たちは、民間が国債を欲しがっているのだから、日銀が国債を独占しているのは民間にとって不利益だと言います。

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