量的緩和は景気を悪化させる。
私はまじめに言っている。そして、これは小幡績という主流派でない経済学者の奇をてらった見方ではない。なぜなら、これが20世紀の最も重要な経済理論に関する書物である、ケインズの一般理論のエッセンスであり、メッセージだからだ。
実は、バーナンキ(米FRB議長)ですら、この事実に部分的に気づいており、賢明な白川方明総裁は、よく分かっている。
整理して考えてみよう。
量的緩和を行わざるを得ない状況とは、金利は極限まで下がっているということである。実質ゼロ金利のとき、銀行などの金融機関を含む投資家には(銀行とは投資家であることを忘れてはならない)、手元の資金の活用手段として、二つの選択肢がある。それは、実物市場に投資するか、証券市場に投資するかだ。
実物投資と証券投資の違いとは
実物市場に投資をすると、その資金は、企業への融資などの形をとり、設備投資などに回ることになる。設備投資とは、必ずしも機械でなくともよく、ビジネス拡大のための投資であればいい。人を雇う場合もあるだろう。したがって、この結果、実物市場での需要がもたらされる。人を雇う場合が、一番望ましく、その場合は雇用も増え、その雇用所得の増加が消費に回り、景気が良くなる。
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