「為替」の誤解 通貨から世界の真相が見える 上野泰也著 ~極論や暴論を排してあるべき政策を説く

「為替」の誤解 通貨から世界の真相が見える 上野泰也著 ~極論や暴論を排してあるべき政策を説く

評者 中岡 望 東洋英和女学院大学教授

 円相場がどうなるかは大きな関心事である。関係者の間では一ドル=50円の超円高もありえるとささやかれる。また巨額の財政赤字と高齢化に伴う低成長が予想され、中長期的に一ドル=200円の円安もありうると主張する論者もいる。本書は、そうした疑問に丁寧に答えている。

著者は、みずほ証券のチーフエコノミストで、各種のエコノミスト・ランキングでトップグループに選ばれる人物である。人気の秘密は分析の切り口の軽やかさにあるのだろう。本書でも、それが随所で見られる。

では、著者は相場をどう分析しているのか。一ドル=200円の“円安待望論”に対しては、中長期的には、その蓋然性は高いが、そうした事態が起こる時は、円(あるいは日銀)への信頼が決定的に損なわれた時だと指摘する。円安になったとしても、その時の日本経済は円安待望論者が期待する姿とは似て非なるものであるという。

では、超円高論はどうか。日米の購買力で見れば、超円高はないとは言えないが、相場が超円高を言い始めた時は、相場の反転が近い時だと、市場での経験則を語る。では何が円高の要因なのか。著者は、ドルやユーロのリスクの増大が原因で、大量の資金が相対的にリスクの低い円に流れ込んだと分析する。その分析に特に目新しさはないが、説得力はある。

ただ、本書の面白味は「円高そのほかの経済情勢にまつわる表層的な議論の間違いを指摘しつつ、日本にとって真に必要な経済政策」を分析し、“極論”や“暴論”を排して、あるべき政策を説いている点にある。奇をてらうことなくバランスの良い分析を展開している。

最近、証券エコノミストの活躍が目立つが、アカデミックな立場からすれば、もう少し骨太な経済論からの分析もほしい。

うえの・やすなり
みずほ証券チーフマーケットエコノミスト。1963年生まれ、上智大学文学部卒業。同大学法学部法律学科に学士入学後、国家公務員試験に合格し、会計検査院入庁。富士銀行に転じ、為替ディーラー、マーケットエコノミストを歴任。2000年より現職。

朝日新聞出版 1575円 246ページ

  

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