〈総額1600億円〉大成建設が東洋建設を買収へ、「再編仕掛け人」は任天堂創業家の資産運用会社

「両社が手を取り合って緊密に連携をすれば、より大きなシナジーが出ると期待した」。盆休みに入る直前の8月8日。午後9時45分から都内ホテルで急きょ開かれた記者会見で、大成建設の田中茂義会長はそう語った。
スーパーゼネコン5社の一角を占める大成建設はこの日、マリコン(海洋土木)大手である東洋建設の買収を発表した。8月12日から9月24日まで1株1750円でTOB(株式公開買い付け)を実施。年内に完全子会社化する予定だ。買収総額は約1600億円となり、ゼネコン業界の買収で最大規模となる。
東洋建設をめぐっては異例のTOB攻防戦が繰り広げられてきた。その中心には、任天堂創業家の資産運用会社「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)」の存在があった。
東洋建設が買収側の主体になる案もあった
2022年3月、東洋建設はインフロニア・ホールディングス(HD)によるTOBを受け入れる考えだった。インフロニアHD傘下の前田建設工業から増資を得て経営再建を図った経緯などで蜜月関係にあり、1株770円でのTOBに賛同していた。しかし、YFOが東洋建設株を買い集めたことでTOBは不成立に終わる。
他方でYFOはインフロニアHDによるTOB期間中、東洋建設の経営陣の合意を前提に1株1000円でのTOB案を提示した。だが東洋建設が難色を示したことで膠着状態に入る。
翌2023年6月に開かれた東洋建設の定時株主総会。YFOは株主提案によって吉田真也氏(元・三菱商事常務執行役員)を東洋建設の会長に就けた。その後、YFOはTOB価格を1255円に引き上げる修正案を出したものの、会社側の同意を得られず、TOB提案を取り下げた。
攻防戦が決着した後も、約3割を持つ株主としてYFOは水面下で動いていた。山内万丈代表は「不賛同で終了ということは決してなく、『株主として企業価値をどう上げるかの対話は続けたい』と、表に出ない範囲で話していた」と明かす。
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