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マンダム創業家が急転直下のMBOへ。非公開化で株式市場の経営改善圧力に対抗。一方、ファンドはTOB価格を疑問視。株価急騰で前途多難の様相

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マンダムが計画するMBOに対し、株主からは公開質問状が提出された(記者撮影)

「残念ながら貴社の本源的な企業価値を十分に反映していない」――。

男性用化粧品を手がけるマンダムが9月10日に発表したばかりのMBO(経営陣による買収)に早くも物言いが付いている。マンダムに対して詳細な説明を求める公開質問状をたたきつけたのは、シンガポール拠点のファンド、ひびき・パース・アドバイザーズだ。

ひびきは2024年7月ごろからマンダム株の取得を開始し、現在は3%弱を保有しているとみられる。今年3月には経営改善などを求める公開書簡を発表し、マンダムの経営陣に対して圧力を高めていた。

突然のMBO発表、株価高騰でTOB開始前から暗雲

マンダム側は創業家出身の西村健社長が自らひびき側と面談。5月に開示した2025年3月期決算説明資料ではROE(自己資本利益率)目標を開示するなど、経営改善に向けて具体的な取り組みを進める姿勢を見せていた。そんな中、突如として発表されたのが、創業家によるMBOだ。

マンダムは創業家が代々経営を担うオーナー企業だ。現会長の祖父が創業者であり、現在の西村健社長は5代目にあたる。今回のMBOは、西村家がイギリスの投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズ系と組み、最大793億円を投じるTOB(株式公開買い付け)を9月下旬メドに開始予定だ。

マンダムは取締役会でTOBへの応募推奨を決議しており、成立すれば上場廃止となる。最終的には創業家株主らが議決権ベースで34%を出資する形の新会社に移行し、西村社長ら創業家が引き続き経営を主導する算段だ。

ただ9月10日の発表以降、マンダムの株価は急騰している。TOB価格である1960円に対し、19日の終値は2140円。TOB価格よりも約9%高い状況が続いている。既存の株主にとってはTOBに応じるよりも市場で株式を売却した方が得なため、買収成立のハードルは極めて高い状況だ。

マンダムの株価がTOB価格を上回って推移する背景には、3つの要因がある。1つは、自らが掲げた目標との矛盾だ。

マンダムは2025年3月期の決算説明資料で、3年後の2028年3月期までに株価3000円、PBR1.5倍を目指すという目標を公言したばかりだった。ひびきの清水雄也CIO(最高投資責任者)も「会社が公表している資料と照らし合わせても、このTOB価格には整合性がない」と指摘する。

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