有料会員限定

総合商社が対峙するコングロマリットディスカウントの壁、「IRの優等生」の三井物産は市場の割安評価にどう向き合うか

✎ 1〜 ✎ 16 ✎ 17 ✎ 18 ✎ 19
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小
総合商社は「コングロマリットディスカウント」から抜け出せていない(撮影:尾形文繁)

特集「商社大異変」の他の記事を読む

このところ年間5000億円〜1兆円の純利益を上げる総合商社。社員の待遇も破格で、三菱商事の平均年収は2000万円を超えている。エリート企業の代名詞ともいえる総合商社だが、市場からの評価は意外に高くない。「コングロマリットディスカウント」(複合企業の割安評価)から抜け出せていないのだ。商社業界でも特にIRに力を入れる三井物産の重田哲也CFO(最高財務責任者)に、商社セクターの評価引き上げ策や自社の成長戦略を聞いた。

――ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイが2019年、三井物産など5大商社の株の保有を始めてから6年。今年9月にはバークシャーが保有割合を10%超に引き上げました。この間、海外投資家などの反応は変わりましたか。

変わってきたと思う。IR(インベスター・リレーションズ)には手ごたえを感じ始めている。海外でも「総合商社って何?」と聞かれることはなくなった。バークシャーが当社株を取得してから、新たに、あるいは久しぶりに三井物産と会ってみようと声をかけてくれる投資家も少なくない。中国景気の停滞で投資先として日本に目が向く中、業績も堅調、魅力ある成長投資と時価総額の上昇もあって、高い関心を維持してもらっているとの印象がある。

――ただ、市場からは依然として「商社の事業内容はわかりにくい」とみられがちです。どのような対話を心掛けていますか。

投資家やアナリストとの面談は会社数で言えば25年3月期で年間延べ700件ほどになる。統合報告書では過去20年のポートフォリオの変化と業績をチャートで示し、当社の全体像を端的に示した図、強みを示す事例なども盛り込んだ。

「コングロマリットの三井物産」に関心

当社のビジネスの舞台はグローバルで、社会課題に対する産業横断的な現実解の提供を掲げている。例えば低炭素アンモニアを製造して、 肥料や産業用に出荷する。石炭に代わる発電燃料に使えばCO2の排出を減らせる。船舶燃料にもなる。セグメントをまたいでどんどんビジネスが広がっていく。こうした事例も挙げながら、丁寧な事業説明を心掛けている。

投資家との最近のやり取りでは、直接何かを売却してコングロマリットディスカウントを解消せよという話にはならず、むしろコングロマリットである三井物産にどんな面白みがあるのか探ってみようというアプローチになっている。

それでも、当社を含む総合商社のPER(株価収益率)は依然割安だ。日経平均より低く、テック企業の足元にも及ばない。商品市況の振幅によるボラティリティが高いと思われている。ただ、分析して解消すべきものはしていくが、開き直ることがあってもいいと思う。

次ページポートフォリオのバランスにも腐心
関連記事
トピックボードAD