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〈慣例なら残り3年〉三菱商事の中西社長が任期中に狙う「2027年度に純利益1.2兆円」、成否を左右するのはLNG事業の拡大と大型買収

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LNGカナダプロジェクト
カナダのブリティッシュ・コロンビア州キティマットに建設された天然ガス液化設備。三菱商事がLNGカナダプロジェクトに動き出したのは2009年だった(写真:LNGカナダ)

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世界的なインフレや為替、金利の激変を背景に、三菱商事が国内洋上風力事業からの撤退を表明したことは、業界内外に大きな衝撃を与えた。経営環境が不透明感を増す中、各商社のビジネスにもさまざまな異変が起きている。いま総合商社で何が起きているのか、深層を探った。

「メディアやアナリストからは数字の根拠について質問をたくさんもらっており、いま丁寧に説明している。各事業の数字を積み上げて到達できる数字として出している」

三菱商事の中西勝也社長は東洋経済のインタビューにそう話した。今年4月、三菱商事は新しい経営戦略を公表し、連結純利益を2027年度に1.2兆円へ拡大させると宣言した。

22年度に資源市況の高騰を背景として過去最高益となる約1.1兆円を記録したとはいえ、25年度の純利益は資源市況や東南アジアでの自動車販売の低迷から、7000億円の見通しだ。3年後の1.2兆円計画について、アナリストからは「数字を伴った具体的根拠は不明」との指摘もあり、中身が注目されている。

3つの角度からの成長戦略

垣内威彦前社長(現会長)時代の21年に打ち出した経営戦略で、「循環型成長モデル」を打ち出した。当時の資料には「三菱商事による事業価値向上が難しくなった事業は、収益の柱であっても新たな成長の柱候補に入れ替える」と記されている。

この方針に基づき、22年度には業界最大級の不動産運用会社で「虎の子」だった三菱商事・ユービーエス・リアルティ(現KJRマネジメント)が約2300億円で売却された。

野村証券の成田康浩マネージング・ディレクターは、「不動産やインフラの分野では、投資後に売却してキャピタルゲインを得る事例が増えている。こうした分野では、インフレでIRR(内部収益率)が高い投資が難しい中、キャピタルゲインを含めた投資モデルに変化している側面もある」と指摘する。

24年度にはオーストラリアの炭鉱、さらに日本KFCホールディングスやイギリスの食品会社を売却した。ローソンは出資比率を下げ、子会社から持ち分適用会社にした。

今年度からスタートした新経営戦略では、「磨く(既存事業の拡大)」「変革する(事業パートナーを招き入れてのテコ入れなど)」「創る(新規投資)」という3つの角度から成長戦略を打ち出した。投資枠としては過去最大となる4兆円を設定。更新投資に1兆円、拡張・新規投資に3兆円を充てる。

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