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エスラインMBOで「応募契約の強圧性」が新論点に 応じたのはみずほ信託銀行やいすゞ自動車など

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エスラインMBO
東証スタンダード市場での上場が廃止する見込みとなったエスライン。TOB開始の発表資料には応募に合意した株主がずらりと並んでいた(編集部撮影)

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MBO(経営陣が参加する買収)を目的に実施されていた、物流中堅・エスライングループ本社のTOB(株式公開買付け)が6月26日に終了した。買収したのは創業家出身の山口嘉彦社長が100%出資した特別目的会社だ。非上場化で物流の2024年問題対応など事業構造改革を進めるとする。

下限の54.28%を約9%ポイント上回る63.24%の応募があり、TOBは成立した。ただ、買収者の保有割合は、筆頭株主で山口社長一族の資産管理会社である美美興産保有分との合計で75.3%にとどまった。

いわゆる少数株主の半分超が応募しなかった計算になる。今後応募しなかった株主から、強制的に買い取る価格について、法廷闘争が展開される可能性を残したと言っていい。

PBR1倍割れのTOB価格

TOB価格の1株1460円は、発表前の3カ月平均株価に異例とも言える62.58%もの高水準のプレミアムを乗せた金額だった。にもかかわらず、5月16日のTOB開始当日から、株価はいきなり1460円を大きく上回って推移した。

株価がTOB価格に収斂されたのは6月20日とTOB期限の4営業日前になってからだ。株価がTOB価格を上回り続けたのは、直近2024年3月末時点の1株あたり純資産と比較したPBR(株価純資産倍率)が、1倍を大きく下回る0.56倍でしかなかったからだ。

昨年3月に東京証券取引所が、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」を公表した。以降、PBR1倍割れのTOB価格にも厳しい目が向けられている。

対抗馬の出現への期待感から株価はTOB価格を上回る展開になった。TOB期間終了が近づき、その可能性がなくなったことでTOB価格に収斂された。

そうして幕を閉じたエスラインのTOBだが、1倍割れのTOB価格のほかに批判の声が上がっている点がある。TOB開始前にTOBへの応募を約束する「応募契約」についてだ。

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