有料会員限定

日本で急増する「アクティビスト」との向き合い方 元エリオット幹部「最初の姿勢と会話記録が重要」

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小

欧米で起きている株主アクティビズムの現象が、日本でも数多く見られ始めている。

取材に応じるブランズウィック・グループのチャーリー・クーンズ氏(左)とマイケル・オルーニー氏。2月の来日期間中に多くの日本企業と面談を行った(撮影:梅谷秀司)

特集「株式市場での新お作法」の他の記事を読む

対象企業への書簡の送付や株主提案といったアクティビスト(物言う株主)のキャンペーン数で、アメリカに次ぐ世界第2位の市場となった日本。3月期決算企業における2025年6月の株主総会では、2024年に続き、アクティビストの活動はますます活発化するとみられている。
イギリス発祥の戦略コンサルティング会社、ブランズウィック・グループは、グローバルにアクティビスト防衛の支援を行っている。日本企業はアクティビストとどう対峙すればいいのか。数々のアクティビストとの攻防を見てきた、マイケル・オルーニー氏とチャーリー・クーンズ氏に聞いた。

――日本でアクティビストの活動が活発化している現状をどのようにみているでしょうか?

クーンズ氏(以下、クーンズ) 2024年の株主総会で起きた出来事は、アクティビストが日本でこれからさらに多くのキャンペーンをしかけてくる始まりにすぎない。アクティビスト投資家は、まだ掘り起こされていない価値を持つ優良企業に注目している。そして多くの場合、そうした企業はコングロマリット(複合企業体)構造をとっている。

アクティビストを名乗り始めた海外投資家が、次々と日本に押し寄せてくると考える必要はない。アメリカのエリオット・マネジメントやバリューアクト・キャピタルのような日本市場での経験を持つ洗練されたアクティビストは少数だ。アクティビストとして日本の企業文化を知り、日本の企業システムの枠内でどのように働くべきかを知るには、かなりの時間が必要となる。

ただ、日本市場の攻略を重点化し始めたプレイヤーは多く、日本では今後さらなる高いレベルのアクティビズムが見られると思う。

オルーニー氏(以下、オルーニー) 日本はアクティビスト投資家にとって非常に友好的な市場だ。スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードなど、政府や東京証券取引所が行った一連の改革により、日本市場はアクティビズムが行いやすい環境になった。

そして、チャーリー(・クーンズ)が言ったように、日本には過小評価されている企業がたくさんある。彼らは日本市場に参入することで、政策保有株式や(不動産などの)ノンコア資産の売却を狙っている。つまり、日本市場はアクティビストにとって、ターゲットが豊富にあると言える。

――アクティビストからのアクションがあったときに、日本企業はまずどのような対応を取るべきでしょうか。

Charlie Koons(チャーリー・クーンズ)/ブランズウィック・グループ パートナー(ニューヨーク拠点)。同グループのアクティビスト防衛部門を共同統括する。 委任状争奪戦を含む公開キャンペーン支援で25年以上の経験を持つ。同グループ入社前は、世界的なIRコンサルティング会社であるモロー・ソダリやマッケンジー・パートナーズでアクティビスト防衛部門を率いた(撮影:梅谷秀司)

クーンズ アクティビストが会社の中に入ってくると、いつも大きな混乱が生じるし、企業はそれを決して好まない。

しかし、アクティビストと向き合う際のベストな対応は、自社の取締役会、経営陣、戦略に自信を持つ姿勢を保ちつつ、アクティビストの意見にもオープンな姿勢で、何かよいアイデアがあるかどうかを見極めることだ。それによって企業とアクティビストとの緊張を取り除き、うまくいけば両者の間で何らかの和解に至るための私的な合意に達することができる。

オルーニー 経営陣や取締役会の最初の姿勢が重要だ。最初の会話を非公開で建設的なものに保つだけでなく、建設的な関与を行った記録を残すことも欠かせない。もしその企業の関与がその後より敵対的なものになり、より公になったとしても、記録があれば企業はアクティビストに対してオープンマインドであることを示すことができる。

アクティビストを尊重し、意見に耳を傾け、ほかの株主と同じように接しているということを多くの市場関係者にアピールすれば、その後の情勢が不利になることを避けることができる。

――アクティビストとの対話がうまくいかず、メディアを使った公開キャンペーンにいたるケースもあります。このような世論づくりが始まる事態を避けるためには、どうすればいいのでしょうか。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD