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業績好調の企業がアクティビストに狙われる理由。カナメ・キャピタル 槙野尚パートナーに聞く

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カナメ・キャピタル パートナー兼リサーチ責任者 槙野尚氏
槙野 尚(まきの・なお)/カナメ・キャピタル パートナー兼リサーチ責任者。1989年生まれ。2012年東京大学法学部卒業後、モルガン・スタンレーMUFG証券で株式調査を担当。2014年からみさき投資でエンゲージメント投資に携わった後、2022年米コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。同年から現職(写真:編集部撮影)

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市場改革の推進や株主の攻勢によって、日本の上場企業は大淘汰の波にのみ込まれている。本特集「上場企業クライシス」では、激変期に突入した資本市場の今をリポートする。

ROE(自己資本利益率)やPBR(株価純資産倍率)が高く、一見経営に問題がなさそうな企業でも、アクティビスト(物言う株主)から株主提案を受けている。カナメ・キャピタルの槙野尚パートナー兼リサーチ責任者は、「会社がポテンシャルを発揮できていない」からだと指摘する。

――6月の株主総会で提出された株主提案は、社数・議案数ともに過去最高でした。日本企業へのアクティビズムは、なぜ活発化しているのでしょうか。

経営陣や社外取締役との対話、書簡の送付などを行っても、取締役会が有効な施策を打ち出せない。だから皆の意見を聞きましょう、というのが株主提案の趣旨だ。提案数が過去最高ということは、取締役会への不満が最高潮だということ。取締役会の機能不全を示唆している。

取締役の選定には、たいてい社内の役員が関わっている。だから経営陣の方針には「ノー」と言えない。これでは社外取締役が定員の3分の1を占めたり、女性比率を高めたりしても有効性は高まらない。この状況を打破する必要があり、株主提案は今後も増えるだろう。

――成長性やガバナンス(企業統治)に不備がなくても株主提案を受ける企業が増えています。

3月の総会で香港のオアシス・マネジメントが株主提案を行った花王が試金石だ。ROEやPBRが好調で、連続増配を行っていても、世界大手のユニリーバやP&Gと比べて優れた経営をしているかというと、そうではない。フルポテンシャル(企業価値の最大化)を達成していない会社に対しては、株主の視点を持った取締役が1人や2人はいてもよいと私は思う。

同じような企業が、ペンタブレットメーカーのワコムだ。6月の総会でアクティビストのAVI(アセット・バリュー・インベスターズ)から株主提案を受けており、私は株主側の社外取締役候補になることを引き受けた。

AVIから打診があったのは今年の春。ワコムという会社を知ってはいたが、会社と対話したことはなかった。詳しく調べてみると、ビジネスのポテンシャルがあるにもかかわらず、株価は非常に割安で、経営陣がそれに対処できていない印象を受けた。われわれにもできることがあると考えてワコムに投資し、社外取締役候補者になった。

――ワコムのROEは10%超、PBRも2倍超で問題ないように見えます。

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