
東京証券取引所が新市場体制に移行して3年。ほとんどの企業が横滑りし「骨抜きの改革」とも揶揄されたが、その後は上場維持基準の引き上げや資本コストを意識した経営の要請など、むしろ上場企業をふるいにかける動きが増えている。東証改革のゴールはどこにあるのか。日本取引所グループの山道裕己CEOに聞いた。
求めるのはあくまで質
──2024年には94社が東証で上場廃止になりました。東証全体の上場社数も、現在の体制が発足した13年以降で初めて減少に転じました。非公開化が相次ぐ状況をどうみていますか。
上場社数が減ることについてはニュートラル(中立)。われわれが求めるのはあくまで質だ。持続的な成長と、中長期的な企業価値の向上を目指すこと。上場企業の質が高くないと、世界の投資家に日本株に注目してもらえない。
昨年上場廃止になった企業のほとんどは、親会社による完全子会社化やMBO、つまり前向きな非公開化だ。上場のメリットとコストを考えた結果だろう。目的を持って上場している、精鋭企業の集まったマーケットにしたい。
──東証プライム・スタンダード・グロース市場が発足して3年。市場制度改革は現在何合目ですか。
まだ1.5合目か2合目くらいだろう。コーポレートガバナンス改革は未来永劫続けるもの。一定のレベルに達したと思っても、グローバルの水準が上がる中では、さらに上を目指さないといけない。ひょっとすると、5年後に同じ質問をされても、まだ1.5合目か2合目のままかもしれない。
プライムを例に取ると、5月末時点で1627社が上場しているが、本当のグローバル企業と呼べるのは20〜30%ほど。この人たちはわれわれの要請に関係なく、グローバルの投資家との対話を通じて成長を模索している。
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