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政策保有株主にも潜む「暗黙の合意」の落とし穴 「ウルフパック戦略」嫌疑は他人事ではない

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共同保有
大量保有報告書のいわゆる「5%ルール」は共同保有分も対象だ(編集部撮影)

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ウルフパック戦略――。共同保有関係にない複数の投資家が一斉に特定の銘柄の株式を取得したり、同一内容の議決権行使をしたりする行為を近年そう称している。ウルフパックはオオカミの群れを意味する。

上場企業の発行済み株式数の5%超の株式を保有した場合、大量保有報告書を5日以内に提出する義務がある。そして金融商品取引法は、27条の23の5項で、共同して株券を取得、譲渡、そして議決権行使をする場合は共同保有者とすると定めている。共同保有分が5%超となれば報告書の提出義務が生じる。

大量保有報告書提出制度には、違反すれば5年以下の懲役か500万円以下の罰金、その両方という罰則規定がある。2008年からは、対象銘柄の時価総額の10万分の1の額の課徴金制度も創設されている。

「三ッ星案件」はあくまで形式犯

6月28日、ケーブル大手で東証スタンダード市場に上場する三ッ星の株式取得をめぐり、証券取引等監視委員会(SESC)が課徴金納付命令勧告を出した。勧告を受けたのは和円商事ほか1社1個人だった。

勧告理由の1つは、5日以内の提出義務を守っていなかった、というもの。もう1点は、和円商事と1個人が共同保有者としての提出義務違反を問われたのだった。

三ッ星はウルフパック戦略が実施されたと噂される代表銘柄だ。今回勧告の対象になった個人A氏は和円商事の支配株主兼代表者である。支配株主個人や代表者個人と会社は、金商法の規定上、形式的に共同保有関係となる。従って、共同保有者としての提出義務は当然にあった。

過去、共同保有関連では2011年に金融庁がSESCの勧告を経ずに直接処分を出した事例がある。これはシティグループへの処分だったが、システム上の不具合を原因とする事務ミスレベルのものだった。

そういう意味で今回の「三ッ星案件」は注目に値するが、形式犯でしかないのも事実だ。三ッ星株の取得で合意していたり、同じ内容で議決権行使をすることで合意していたりしたかが問われたわけではなかった。

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