村上系ファンドの餌食に、静岡・老舗企業の盲点 拙速なTOBに対してアクティビストが揺さぶり

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賛同表明したTOBを起因に、複数のアクティビストから株式を買い増された焼津水産工業(記者撮影)

静岡県に本社を構える老舗企業が、「アクティビスト」(モノ言う株主)の攻勢に遭っている。

焼津市の調味料メーカーである焼津水産化学工業(1959年創業)は、売上高128億円(2023年3月期)、時価総額約150億円(2023年10月12日時点)の小型株にもかかわらず、村上系ファンドや3Dインベストメント・パートナーズが急速に株式を買い増している。

「強面」の投資家が群がる背景には、拙速なTOB(株式公開買い付け)に対する揺さぶりが透ける。

アクティビストが2割買い占め

焼津は8月4日、投資ファンド「J-STAR」の関連会社である「YJホールディングス」からのTOB提案に賛同を表明した。買い付け価格は1株1137円で、当初の買い付け期間は8月7日から9月19日までだった。TOBは完全子会社化を目指しており、一連の手続き後に、焼津の株式は上場廃止になる予定だ。

このTOBこそ、焼津がアクティビストに目をつけられた元凶だ。

大量保有報告書によれば、9月中旬時点で村上系ファンドの南青山不動産、シティインデックスイレブンス、エスグラントコーポレーションの3社は焼津株を計10.36%保有している。3Dも同時期に9.78%を保有しており、アクティビストだけで2割超を握る計算だ。

焼津はなぜ標的になったのか。ヒントはアクティビストが焼津株を買い始めた時期だ。村上系ファンドが市場内で買い付けを始めたのは8月8日。その前日に、YJホールディングスが焼津に対してTOBを開始した。

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