水族館の人気者バンドウイルカを死に追いやった「ブドウの房」のような姿をした生き物の正体――飼育員さんの強い思いで実現した出張解剖

飼育員さんたちの目の前で…
水族館のバックヤードで行われた病理解剖が、一通り終わりました。
「ふぅ……」
若い飼育員さんが、深く息を吐きます。ほかの参加者たちも、器具を片付けたり床にこぼれた血液をホースで流したりしながら、直前までの緊張状態からまだ抜けきっていない様子です。
このとき僕が病理解剖を行った動物は、水族館で飼育されていたバンドウイルカ。日本の水族館で最もたくさん飼われているイルカで、長く伸びた上下の顎が特徴的です。
遺体は体長およそ3メートル、体重250キロのオスで、推定年齢は25歳。バンドウイルカの寿命は正確にはわかっていませんが、それなりに年をとっていると思われる個体です。