水族館の人気者バンドウイルカを死に追いやった「ブドウの房」のような姿をした生き物の正体――飼育員さんの強い思いで実現した出張解剖

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今回はなぞの死を遂げたバンドウイルカの話です(写真:chocojelly/PIXTA)
飼っている動物が病気になったら、動物病院に連れていきますよね。動物病院には外科、内科、眼科など、さまざまな専門領域の獣医師がいますが、獣医病理医という獣医師がいることを知っていますか?
この記事では、獣医病理医の中村進一氏がこれまでさまざまな動物の病気や死と向き合ってきた中で、印象的だったエピソードをご紹介します。

飼育員さんたちの目の前で…

水族館のバックヤードで行われた病理解剖が、一通り終わりました。

「ふぅ……」

若い飼育員さんが、深く息を吐きます。ほかの参加者たちも、器具を片付けたり床にこぼれた血液をホースで流したりしながら、直前までの緊張状態からまだ抜けきっていない様子です。

このとき僕が病理解剖を行った動物は、水族館で飼育されていたバンドウイルカ。日本の水族館で最もたくさん飼われているイルカで、長く伸びた上下の顎が特徴的です。

遺体は体長およそ3メートル、体重250キロのオスで、推定年齢は25歳。バンドウイルカの寿命は正確にはわかっていませんが、それなりに年をとっていると思われる個体です。

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