老化した細胞を体から取り除き、若返りや健康寿命の延長を可能にする――。
そんな薬の開発が今、世界中で行われている。マウスの実験で老化細胞が除去できたと報告された薬の候補物質はすでに20種類以上に上る。
国内では2021年、東京大学医科学研究所の中西真(まこと)特任教授らの研究グループが、ある酵素の働きを阻害する薬剤(GLS1阻害剤)を老齢マウスに投与すると、複数の臓器や組織で老化細胞だけが除去され、加齢に伴うさまざまな症状も改善されたとする研究成果を米科学誌サイエンスで報告した。
さらにその翌年には、がんの治療薬としてすでに使われている薬剤(抗PD-1抗体)でも同様の効果がみられたとして、英科学誌ネイチャーで発表した。
著名な雑誌に掲載されたこともあり、2つの論文は大きな注目を集めた。NHKをはじめ多くのメディアでも取り上げられている。
中西特任教授は東大医科研の前所長で、内閣府主導のムーンショット型研究開発事業では26年3月までの5年間、老化細胞除去技術の人への応用を目指す開発プロジェクトを統括した。老化細胞除去薬の社会実装を目指すバイオベンチャー、リベルサスプ セラピューティクス(reverSASP Therapeutics)社でも科学顧問を務める。
ところが26年4月、いずれの薬剤でも論文で報告されたような効果を再現できなかったとする論文が、欧州分子生物学機構の発行する学術誌エンボリポーツで発表された。
大阪大学微生物病研究所の原英二教授と河本新平准教授(現・東北大学ヘルススパン研究センター教授)が中心となり、熊本大学、京都大学、がん研究会がん研究所、国立長寿医療研究センター、国立循環器病研究センターの6機関、計7つの研究室で連携して実験・解析した結果だ。
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