政府がいよいよ、デュアルユース(軍民両用)研究の推進に本腰を入れ始めた――。7月14日に閣議決定された「統合イノベーション戦略2026」を読んでの感想である。
同戦略によれば、2030年度までに国立研究開発法人(国研)や大学に「オフキャンパス」機能のある防衛研究基盤を整備するとともに、「防衛省の基礎研究に研究者が躊躇なく参画できるよう」、関係省庁が協力して「理解増進」に取り組む。また、主に安全保障関連の技術動向の調査や人材育成を図る「重要技術戦略研究所(仮称)」を今年度中に設立するという。
オフキャンパスは大学のキャンパス外での体験型学習を指すこともあるが、ここでは施設や情報へのアクセスを徹底管理した区画や環境を意味する。大学や国研は本来、オープンな研究環境だが、その環境とは別にセキュリティー対策を徹底した「島」を作るイメージだ。拠点にはアカデミアの研究者も当然、出入りするが、キャンパス本体とは異なるルールに従うことになる。
統合イノベーション戦略とは、5カ年の科学技術・イノベーション基本計画の下、毎年策定されるものだ。2月18日の配信記事「科学の再興&軍民両用技術の推進、新たに策定される政府の『科学技術・イノベーション基本計画』に交錯する期待と懸念」で述べた通り、デュアルユース研究の推進は30年度までの第7期の基本計画に盛り込まれており、それが今年度の戦略に反映されたというわけだ。
したがって驚くような内容ではないものの、理化学研究所や物質・材料研究機構などの具体的な研究機関名を挙げて「オフキャンパス機能」や「セキュアな環境」の整備をうたう戦略の内容をみると、少々落ち着かない気持ちになる。アカデミアにそうした場を設けてデュアルユース研究の比重を高めることが、日本の科学にとってプラスになるとは到底思えないからだ。
MITのリンカーン研究所は厳格なセキュリティー
統合イノベーション戦略にあるオフキャンパスに最も近い海外の実例といえば、アメリカの連邦資金開発研究センター(FFRDC:Federally Funded Research and Development Center)がある。その代表格が、マサチューセッツ工科大学(MIT)が運営する「リンカーン研究所」だ。第2次大戦中のレーダーの研究プログラム「MIT放射線研究所」を引き継ぐ形で、1951年にMITのキャンパス外に設立された。成り立ちも役割も、まさに「オフキャンパス」の起源ともいえる存在だ。
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