日銀は「円安」「国債の山」「次の緩和」をどうするか 物価の権威・渡辺努に小幡績が迫る【後編】

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渡辺 いま日銀が持っている500兆円のうち、200兆円を民間に渡すのがちょうどいいのなら、そこを目指すべきです。だけど残り300兆円は日銀が持つ。

異次元緩和の前は、日銀の当座預金残高は10兆円という規模でした。そこまで減らすのかどうかという話でしょう。

小幡 私はストック(国債残高)ではなくフロー(国債購入額)が焦点だと思っています。日銀が買わなくても、市場で妥当なプライスが成立して、政府が国債を発行できる状況になっていることが必要です。

民間が国債を買うのは、後で日銀が買い取るから、という、いわゆる「日銀トレード」でしか国債が発行できない状態になるのはまずいと思います。国債の引き受け手として日銀がいると、政府や政治家が甘えて「無駄づかいしても大丈夫」となってしまう。

渡辺 僕も今の財政規律の状態は問題だとは思うけれど、やっぱり政府や国会が対応するのが筋です。日銀からのルートで規律をもたせようとするのは邪道です。

金融市場と実体経済、歪みのコスト

小幡績(おばた せき)/慶応義塾大学大学院経営管理研究科教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。1967年生まれ。1992〜1999年大蔵省(現・財務省)。一橋大学経済研究所専任講師、慶応義塾大学大学院准教授などを経て、2023年から現職。著書に『すべての経済はバブルに通じる』など(撮影:梅谷秀司)

小幡 異次元緩和は異常に大量の国債を購入して、異常な市場にしてしまったわけです。それに乗じた政治によって財政規律が壊れたのであれば、異常事態の原因を除去する責任は日銀にあると思います。やるべき緩和をして生じた副作用であれば、それは日銀以外のプレーヤーが是正すべきでしょうが。

為替も同じで、日銀に責任があります。

「価格を自由に動かす」という異次元緩和の目的自体はいいとしても、結果的にはマーケットの期待だけが動いて資産市場の歪みが大きくなった。為替は、日銀とアメリカ中央銀行の金融政策により、購買力平価から大きく乖離して円安が進んだ。

渡辺 僕は、価格が動かないことで実体経済が歪むコストが大きいから、金融市場では少々のことが起きても仕方がないと思っています。

日銀が保有する国債を異次元緩和前の水準まで減らす必要はなく、200兆、300兆円程度は残り続けるということでいいのではないかと思います。マーケットの人たちもそう予想しているのでは。そうすると金利が抑えられた状態が続くので、為替が円安になるのも当然なのでは。

小幡 為替はあきらめるしかないんですか。私は金融政策のターゲットは財市場の指標である物価より、金融市場の要の変数である為替にすべきだと思うほどです。日銀は金融に責任を持つべきだと。

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