有料会員限定

「令和の米騒動」はなぜ起きた?槍玉に挙がった米卸トップが語る価格急騰の根深い背景。国が「備蓄米を出すかも」と昨秋に言っていれば...

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小
山﨑元裕(やまざき・もとひろ)/全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)理事長。1963年生まれ。1988年慶応義塾大学卒業、現ヤマタネ入社。2013年代表取締役社長、2024年6月から代表取締役会長。同月、全米販理事長に17年ぶりの交代で就任。創業100年のヤマタネ創業家出身(写真:風間仁一郎)

特集「どうなる?日本のコメ」の他の記事を読む

前年の2倍にまで高騰したコメ価格。5月に就任した小泉進次郎農林水産大臣は、政府備蓄米を店頭価格5キロ2000円前後と指定する異例の随意契約で売り出した。
さらに「コメの流通はブラックボックスだという指摘が多々寄せられている。とある卸の大手の営業利益は、なんと対前年比500%ぐらいだ」と発言し、米卸に対する批判が広がった。
そこで米卸業界団体トップに話を聞いた。139の米卸業者が組織する全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)理事長を務める山﨑元裕氏(ヤマタネ会長)だ。
いったいなぜ、コメの価格はこれほどまで上がったのか。なにが問題なのか。

――6月以降、コメの店頭価格は下落に転じています。

国がもっと早い段階で「備蓄米を出すことを考えている」というアナウンスだけでも行っていたら、これほどまで価格は高騰していなかったかもしれない。われわれ米卸は昨年の秋口の時点で「コメが足りない」と確信し、国に対して備蓄米を出してほしいと依頼していた。

問題は価格ではなく量の不足だった。米卸としてコメを切らすわけにはいかない。

だが、国は「コメは足りている。備蓄米は不作により食糧不足が起きた時のためのもので価格を下げるためには使わない」と受け入れなかった。

ならば、備蓄米について「活用を検討する」とアナウンスするというのはどうですか、と提案した。金融の世界だと、当局が市場介入するかもしれないという噂が出るだけで為替レートが動いたりする。

「仕入れを厚めに」と米卸は焦った

――「抜かずの宝刀」だと言われますね。

政府の立場として市場への介入はなるべく行わないことが基本であり、われわれとしても、そう簡単に備蓄米を出せるとも思っていなかった。

ただ国から「備蓄米について検討してもいい時期かもしれない」という程度の話が出れば、業界外でコメを抱え込んでいるプレイヤーに対しては揺さぶりになる。出回るコメの量が増えれば相場が下がって損をするから、今のうちに売ってしまえ、となるはずだった。アナウンス効果だ。

――「転売ヤー」的な存在はいたのですか。

可能性としてはあると思っていた。産地で2024年産新米が収穫されるころ、見知らぬ人たちがウロウロしているという話を耳にしていたからだ。その時点で2024年産のコメが足りないことは見えていたから、従来のコメのサプライヤーではない業界外が入ってきた。

コメはかさばるから業界外の人間が何十トンも動かせるものではないが、相場をかき回した部分はあるだろう。

――少ない量でこれほど業者間取引の価格が高騰するものでしょうか。

取引が活発に行われていれば信憑性の高い相場が立つが、そもそも取引量が少ない中で価格が上がっていった。業界外のプレイヤーがどの程度の量を集荷しているのかもわからず、米卸は仕入れを厚めにしなければと焦った。

次ページ米卸の焦りをかきたてた「後悔」
関連記事
トピックボードAD