路面電車が駅ビルの2階に乗り入れるという、全国初の試みが今年8月に広島市で実現した(詳細はこちら)。広島電鉄とJR西日本という異なる交通事業者によるこのプロジェクトは、広島市が全国に先駆けて推進する公共交通システムの「未来図」に基づくものだった。
広島市は、2016年に「広島市地域公共交通網形成計画」、18年には「広島市公共交通再編実施計画」を策定し、市中心部に複数の交通事業者が乗り入れる均一運賃エリアを設定するなど、交通事業者間の「協調路線」へと舵を切ってきた。
これらの計画により、路面電車とバス、すべての交通手段を1つのシステムとして連携・統合させる。そして「広島型の公共交通システムを構築し、広島広域都市圏域内人口200万人のラインを維持する」(広島市・公共交通調整担当の楠窪拓馬課長)ことを目指す。
広島広域都市圏の中心に位置する広島市の人口は現在も110万人を超えるが、19年をピークに減少へと転じている。23年の転出超過数は全国政令都市の中でワースト。大学卒業時などに東京や大阪へ流出する若者が増えているのだ。
広島は全国有数の「バスの街」
危機感を募らせる自治体関係者は、広島市の再活性化を図るべく、まず市内路線バスに対して、「バス協調・共創プラットフォーム」の構築に乗り出した。下の広島市の公共交通網を見てほしい。
広島市の中心市街地は、一級河川・太田川の支流が分流してできた6本の川で囲まれた広大な三角州(デルタ)に位置している。

デルタ地帯には、交通の要衝である広島駅や、主要な繁華街の八丁堀・紙屋町、行政機能が集まる広島市役所が含まれる。さらに、世界遺産の原爆ドームや平和公園といった歴史的・文化的拠点も、このデルタ地帯に集中している。
この中心市街地の北側をJR山陽本線が走り、市街地を囲むように、広島電鉄の路面電車網が張り巡らされている。



















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