昨夏の後悔から仕入れに焦り…米卸トップが明かす「令和の米騒動」の真因とは?「備蓄米出すかも」と早い段階で国が言っていれば高騰は防げた

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
山﨑元裕(やまざき・もとひろ)/全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)理事長(写真:風間仁一郎)
「米卸が抱え込み、値段を釣り上げているのではーー」。前年の2倍まで価格が急騰したコメをめぐり、槍玉に挙がってきたのが米卸業者だ。小泉進次郎農林水産大臣が6月に国会で「大手の営業利益は前年の500%」と発言し、拍車を掛けた。
米卸業界は批判にどう応えるのか。139の米卸業者が組織する全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)理事長を務める山﨑元裕氏(ヤマタネ会長)に聞いた。

昨秋に「備蓄米のアナウンス効果」を提案していた

――小泉農相が政府備蓄米を随意契約で放出して以降、コメの店頭価格は下落に転じています。

国がもっと早い段階で「備蓄米を出すことを考えている」というアナウンスだけでも行っていたら、これほどまで価格は高騰していなかったかもしれない。われわれ米卸は昨年の秋口の時点で「コメが足りない」と確信し、国に対して備蓄米を出してほしいと依頼していた。

だが、国は「コメは足りている。備蓄米は不作により食糧不足が起きた時のためのもので価格を下げるためには使わない」と受け入れなかった。

ならば、備蓄米について「活用を検討する」とアナウンスするというのはどうですか、と提案した。政府の立場として市場への介入はなるべく行わないことが基本であり、われわれとしても、そう簡単に備蓄米を出せるとも思っていなかった。

ただ国から「備蓄米について検討してもいい時期かもしれない」という程度の話が出れば、業界外でコメを抱え込んでいるプレイヤーに対しては揺さぶりになる。出回るコメの量が増えれば相場が下がって損をするから、今のうちに売ってしまえ、となるはずだった。アナウンス効果だ。

――米卸悪玉論もあります。

われわれ米卸は相場で売買して利ザヤ稼ぎをするわけではない。純然たる仕入れだ。

コメは1年1作で、米卸は秋に収穫されたコメを仕入れ、翌年の新米が出る頃にかけて売っていく。秋の段階で米卸の主な仕入れ先である全農(全国農業協同組合連合会)の集荷量が例年の7割程度に減ることが見えていた。業界外のプレイヤーがどの程度の量を集荷しているのかもわからず、米卸は仕入れを厚めにしなければと焦った。

それは後悔があったからだ。2024年夏にコメが足りなくなり、取引先から「米卸に売るコメが無くてどうするのだ」と叱られた。なんとか取引先への供給を途切れさせないという使命感から、コメを集めようとして争奪が始まった。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事