昨夏の後悔から仕入れに焦り…米卸トップが明かす「令和の米騒動」の真因とは?「備蓄米出すかも」と早い段階で国が言っていれば高騰は防げた

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――コメが足りない状況はいつから始まったのですか。

スタート地点は2022年秋に収穫されたコメだ。翌年秋を前にして在庫が非常に少なくなっていた。通常、新米が出回ると店頭のコメは前年産から順に切り替わっていくが、2023年秋は早めに新米に切り替わった。

この2023年産の品質があまりよくなかった。玄米から精米する時に割れたりして量が減る。業界内では「このままでは2024年の夏場にコメが足りず大変なことになる」と見通しが立ち、早くも7月には量販店の棚からコメが消え始めた。

そこに8月、南海トラフ地震の地震臨時情報が出て家庭内の備蓄が進み、一気に小売店の棚からなくなった。お盆明けに徐々に新米が出回ると一気に棚に並び、先食いが進んだ。2025年の新米が出回る前の端境期まで持たないことは明らかだった。

――農水省は3月以降、備蓄米を競争入札で全農をはじめとする集荷業者に放出しましたが、店頭になかなか出回らないことが問題視されました。

米卸は備蓄米が手に入ったからといって一気に取引先に売り渡すことは考えない。秋に新米が穫れるまでの数カ月間で均して売っていく。

たとえば例年の7割しか仕入れができていなかったら、1年間もたせるために毎月の供給量を7割に減らしている。そこに備蓄米が出てきたので、販売計画を見直して毎月8割、9割を供給できるようになる形だ。

山積みになって、再び米卸は批判される

――この先のコメの動向はどうなるでしょうか。

「足りない」と言われたはずの2024年産のコメが店頭に山積みになる。われわれは「価格高騰をもくろんで抱え込んでいた」と批判されるだろう。

それは、これまでは仕入れ減に合わせて、新米が出てくるまで途切らせぬように2024年の端境期を教訓として供給していたのが、突然放出された備蓄米により、端境期に向けた供給量を増やせるようになったから店頭に出てきているだけだ。

量販店は店頭価格を下げ始めており、卸値もそれにあわせて下がるから、当初仕入れたコメは早く売らなければならない。米卸は利益を確保できない状況に戻る。

そして穫れ秋には備蓄米や輸入米、2024年産のコメが残るところに新米が登場する。この先どうなるのか予測できず米卸は仕入れを抑えるので、相場は上がらないだろう。

――今回の価格高騰は起こるべくして起きたことなのでしょうか。

これまではずっとコメ余り傾向だったが、需給の逆転現象が2030年代には起きるかもしれないと米卸の業界内では懸念していた。それが想定よりも早く、もう来てしまった。しかし、これほどまでの事態になるとは思っていなかった。

米流通をどう改革するのか?などインタビューの詳細版は、東洋経済オンライン有料版記事「令和の米騒動」はなぜ起きた?槍玉に挙がった米卸トップが語る価格急騰の「根深い背景」、国が「備蓄米を出すかも」と昨秋に言っていれば…」でご覧いただけます。
黒崎 亜弓 東洋経済 記者

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くろさき あゆみ / Ayumi Kurosaki

特に関心のあるテーマは分配と再分配、貨幣、経済史。趣味は鉄道の旅、本屋や図書館にゆくこと。1978年生まれ。共同通信記者(福岡・佐賀・徳島)、『週刊エコノミスト』編集者、フリーランスを経て2023年に現職。静岡のお茶屋の娘なのに最近はコーヒーばかり。

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田口 遥 東洋経済 記者

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たぐち はるか / Haruka Taguchi

飲料・食品業界を担当。岩手県花巻市出身。上智大学外国語学部フランス語学科卒業、京都大学大学院教育学研究科修了。教育格差や社会保障に関心。映画とお酒が好き。

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