フォルクスワーゲンは10月30日、第3四半期(7〜9月)に13億ユーロ(約2300億円)の営業赤字になったと発表した。アメリカ大統領ドナルド・トランプの関税と、ポルシェで進めていた電気自動車(EV)シフトを巻き戻したことが原因だが、年間の業績目標は達成できる範囲にあるとしている。ただし、それは自動車を動かすのに必要な半導体を確保できることが前提となる。
ネクスペリア問題が示すドイツの凋落
アウディ、フォルクスワーゲン、ポルシェなど10のブランドを傘下に持つフォルクスワーゲン・グループは、オランダに本社を置く半導体企業ネクスペリアをめぐるアメリカと中国の対立に巻き込まれている。ネクスペリアは、フォルクスワーゲンなどヨーロッパの自動車メーカー向けにワイパー、ウインカー、警告灯といったシステムを動かす基本的な半導体を製造している。
この対立が解決されなければ、フォルクスワーゲンをはじめとするドイツの自動車メーカーはさらなる損失を被るおそれがある。ドイツの自動車メーカーはすでに、中国での需要減少とアメリカによる関税の引き上げ(8月に2.5%から15%に跳ね上がった)という強い逆風にさらされている。
雇用の提供と歳出の確保を自動車産業の繁栄に長年頼り、「ヨーロッパのエンジン」と称される地位を築いてきたのがドイツだ。しかし、ドイツ連邦統計局が30日に公表した数値によると、同国経済は7〜9月期に前期比でゼロ成長となり、問題は自動車メーカーにとどまらないことが明らかになった。
アナリストらは、ネクスペリアをめぐる対立によって生じた危機は、かつて隆盛を誇った自動車産業の地位が全体として低下していることの表れだと警告している。
INGのエコノミスト、カーステン・ブレゼスキーはメモの中で、「中国の半導体輸出規制の結果としてドイツ自動車産業の生産が止まるという懸念が足元で広がっているが、これはドイツの産業界がもはやゲームのルールを決める立場にはなく、単に受け身の立場でしかないことを実感させる多数の事例の1つにすぎない」と記した。
オランダ政府は9月に、ネクスペリアの経営権掌握に動いた。同社はオランダに本社を置いているものの、中国企業のウィングテックが所有する。中国当局は対抗措置として、ネクスペリア製半導体の輸出を完全停止した。ネクスペリアでは半導体の最終製品の半数以上が中国で生産されている。


















